Case2 雪女さんは人肌が恋しい

「ふぅ~、今日もいい天気ですねぇ~」


私は朝の支度を済ませ、窓からの日差しを浴びながらぐ~と背伸びをします。からっとした良い天気が最近続いていて、過ごしやすい限りです。と、そんなところに、ピンポーンと呼び鈴が鳴ります。


「は~い」


今日もまたお客様ですね。玄関にととと、と小走りで向かってがちゃりと扉を開け・・・。


「きゃっ!」


寒っ!!え、何ですか!?あんなに良い天気だったのに、戸を開けると轟々と吹雪が診療所の中に吹き入れました。


「あら、ごめんなさいね」

「え・・・?」


凄まじい音の中に、女性の声がします。目を凝らしてその声の方向を見てみると・・・。


「今、時間あるかしら?」


透き通るような肌、綺麗な氷のような髪・・・。そこにいたのは・・・。


「アタシ、雪女、だけど」


-----------


「いいい、いらっしゃいませせせせ・・・」

「おい、フリル。客の前だ、しゃきっとしろ」

「だだだ、だってええええ」


さ、寒いよぉ・・・。雪女さんが部屋に入ってくると、辺りの気温が一気に下がってしまって・・・。何枚も重ね着しているけれど、それでもまだ凍えそうに冷えてますよぉ・・・。


「な、何で、せせ先生は平気なんですか・・・?」

「アタシは自分の体温を自在に調節できるからな」


何ですか、その便利能力・・・。当たり前みたいに言わないでくださいよ・・・。


「あ、あのぉ・・・、できれば私にも何かしらの対処を・・・」

「それで?今日はどういった了見だ?」


相変わらずの無視です・・・。ひどいぃ・・・。


「アタシって雪女だから、図らずも触れ合った人を凍えさせちゃって・・・。これが原因で、今、困ってるのよね・・・」

「何にだ?」

「アタシ、今好きな人がいるの・・・。ゆくゆくは体を重ね合わせたいとも思ってるのだけど、アタシの体質のせいで、凍死させちゃうのよ・・・」

「ん?雪女は基本的に、同族の男としか関係を結ばないんじゃないのか?」

「そうなんだけど・・・。アタシって俗だから、すぐに外の男が好きになっちゃうのよ・・・。面倒な性格タチでね・・・」


体をぶるぶる震わせて丸まりながら話を聞きます。・・・恋愛って大変なんですねぇ・・・って、あー寒い!


「だから、どうにか体温を調節できないかしら?先生、あなたって自分の体温を自由に調節できるんでしょ?だったら・・・」

「悪いが、これは完全にアタシ用だ。人に適用することはできない」

「そう・・・」

「ただな・・・。おい、フリル!」

「は、はい・・・?・・・んぐっ!」


返事をするや否や、口の中に何かが飛び込んできました。


「ごほっ、ちょ、先生!何を入れたんですか!?」

「・・・」

「いや、教えてくださいよ!」


ていうか、名前呼ばれて何か口に投げ入れられるって、犬ですか私は!


「どうだ、フリル?まだ寒いか?」

「そりゃあ寒いに決まって・・・、って、あれ?」


・・・寒くない。


「え、どうして・・・」

「あなた、何をしたの?」

「今、フリルに飲ませた錠剤は、ある者と体温感覚を同一にする代物だ。今回は同一責任者をあんたに設定した。つまり、これを飲ませれば、あんたの体温に影響されなくなるってことだ」

「・・・!」


雪女さんはさっきここに初めて来たのに・・・。瞬時に彼女に会う錠剤を生成するなんて・・・。やっぱりすごいのはすごいんですよね、先生って。ドSですけど。


「・・・噂通りね、ここって・・・。巷の医者は誰にも解決できなかったのに」

「そこらへんの医者とアタシをいっしょにするなよ」

「そうね、失礼したわ。でも、さぞかしお高いんでしょう?その錠剤」

「まぁな。だが、愛の為ともなれば安いものだろう?」

「それもそうね・・・。でも、一つ試していいかしら。疑うわけじゃないのだけれど、自分で確かめたくって」

「何をだ?」

「そこの錠剤を飲ませた彼女・・・。本当に効いているのか、いろいろと試していいかしら、プレイを」

「はい!?」


いやいやいや、そんなの駄目に・・・。


「ああ、いいだろう」

「駄目ですって!!即答しないでください!!」

「ありがとう、じゃあ早速・・・」

「いや私の意思はないんですかぁ!?」


私の言葉なんて馬に念仏。雪女さんはすぐに私に迫ってきた。


「い、一体何を・・・」

「安心して、フィニッシュまではしないから・・・」

「フィニッシュって何ですかぁ!?」


当然、質問の答えは返ってこず、雪女さんは体から冷気を発する。


氷牢獄アイスジェイル

「ひゃっ」


彼女の意思で操られる無数の小さな雪と氷の塊が、私の両腕を掴み、両腕はそのまま横一直線にぴーんと伸ばされ壁に張りつけられる。


「あ、あの、動けな・・・むぐっ!?」

「どぉ・・・?冷たい・・・?」


彼女は大き目のサイコロくらいの氷をおもむろに私の口に突っ込んできた。


「・・・ふ、ふめはい・・・」

「そう、出していいわよ・・・」


氷のプレイって一体何なんですか・・・。口から氷を取り出したかと思えば、次は氷の爪でざくざくと私の服が縦一直線で切り刻まれて・・・。


「え、ちょ、でちゃいますって!!」

「そりゃそうよ・・・。プレイだもの」


彼女は服をブラジャーごと切る。私の上半身前面は、柔肌が露わになった。


「は、恥ずかし・・・」

「プレイですもの・・・。多少、恥じらいくらいは、ねぇ」

「ひんっ!!」


雪女さんは私が動けないことをいいことに、さっきの氷を私の乳首にそのまま当ててきて・・・。やっ、冷た・・・。


「あんっ、やめっ・・・」


ゆっくりとなぞるように、その氷は私の胸の周りを踊る。氷の物理的な刺激と冷たさが相まって、その悪戯な玩具が私の乳首をこすれる度に、私の体はびくんと反応する。


「もう、許してくださいぃ・・・」


はっ、はっ、と息を漏らしながら、きっと私の顔はだらしなくなっている。さっきまであんなに寒かったのに、今は顔が紅潮してつーと汗が垂れている。


「ふふ、可愛い。アタシにそっちの気がなくて良かったわね、本当に襲っちゃうところだったわよ」

「・・・もう、十分やられてますぅ・・・」


や、やっと、終わった・・・。


「成程ね、確かに錠剤の効果はテキメンのようね、先生。いつもだったらここまでアタシに迫られたら、凍え死んでいるところですもの」

「それで、どうするんだ?」

「頂くわ、その錠剤。おいくらかしら?」

「毎度あり」


どうやら、雪女さんのお眼鏡にかなったみたいで。先生は錠剤の注意事項などを説明し始めました。ただ・・・。


「あの・・・」


その・・・。


「あのっ、ですってば!!」

「・・・持続時間は・・・」

「・・・ああ、なるほど・・・」

「聞こえてるでしょう、本当は!!」


まず間違いなく面白がって無視を決めている先生と雪女さんのせいで、私は胸が丸見えで十字架の形に張りつけられて、しばらく過ごしたのでした・・・。


「・・・絶対、いつか辞めてやるんだから・・・」

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