Case3 サキュバスさんは色めきたい
「・・・あ、あの、こんにちは・・・」
「あ、はい、いらっしゃいませ」
ここは在り処さえ謎めいていて、そして、辿りつくのも困難な場所。それでも、一般の医者が手におえない悩みを持った方たちが、今日もまたやってきます。
「・・・相談が、あるんですけれど・・・」
帽子を深くかぶって、眼鏡をかけて、露出を出来る限り避けたような全身が黒っぽい地味な服装で包まれています。目は常に逸らし気味で、おどおどとした話し方の女の子が今日の患者さんみたいです。
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「で、どうした?」
テーブルを挟んで、先生と患者さんがソファに座って相対します。私も先生の隣にでも座りたいんですけど、立っとけ、って怒られちゃうんですよね・・・。けちんぼですよ、ホント。
「実は・・・」
「と、その前に、本来の正体を現せよ。医者の前で隠し事なんてナンセンスだ」
「・・・!」
患者さんの女の子は先生の言葉に驚いた表情を見せます。本来の正体?何のことでしょうか?
「・・・私、何か悟らせましたっけ・・・?」
「言ったろ。医者に秘密なんてつまらない」
「・・・まぁ、いいですけれど・・・」
そう言うと、彼女は帽子を取り、眼鏡を外し、暗めの服を脱ぎ始めました。
「えっ!?」
今度は私が驚きの声を出します。長い髪、可愛い顔、大きな胸が露出抜群で出てきて、黒い羽としっぽもお目見えしたんですもん。
「あ、あなたって・・・」
「・・・はい、サキュバスです」
見た目は派手になりましたけど、それでも女の子は照れて伏し目がちにいいます。あれ?でもサキュバスって確か、男性を誘惑する淫魔・・・。こんな内気なものですか?
「成程な。それがお前の悩みか」
「はい・・・」
「え。先生、何か分かったんですか?」
「そんなことも分からないからお前は駄目なんだよ」
「む~・・・」
即答でけなさなくてもいいのに!分からないから仕方ないじゃないですか!
「私、全然
察しが悪い(・・・って自分で言いたくないですけど)私の為に、サキュバスさんが説明をしてくれました。
「・・・お願いします・・・!どうにか
彼女は深々と頭を下げてお願いします。先生、どうするんだろう・・・。
「無理だ」
「えっ!?」
無理!?先生は即答しました。
「そ、そんな・・・」
「医者ってのは、あくまで患者のサポートをする役目。何でもできるってわけじゃない」
それはそうかもしれないけど・・・。先生なら何でもできそうなのに・・・。
「ただ、お前の背中を押してやることはできる」
「どうやって・・・」
「こういうのはきっかけだ。最初さえ成功していまえば、後はどうとでもなる。だからひたすら男相手に練習しまくれ」
「で、でも、
「いる、ここにな」
そう言って、先生は親指をたてて、私の方を指差して・・・って、私!?
「いやいや、何言ってるんですか、先生!!私、女の子ですよ!?」
「
「あ」
今、猛烈に嫌な予感しました。これ、絶対・・・。
「って、いたたたた!何かビリビリしてますってこれぇ!!」
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「げほっ、ごほっ・・・」
たたた・・・。何か痛い・・・。先生から謎の光線を受けたんですけど・・・。
「もぉ、先生、一体何を・・・」
・・・あれ?私って、こんな声でしたっけ?しかも、何だか体が重いような・・・。
「よし、後はこいつを使って
「・・・い、いいんですか・・・?」
「こいつはアタシの助手だ。遠慮するな」
「・・・で、でしたら・・・」
・・・この会話。私を使う・・・。これって、まさか・・・。私は上半身を触ります。・・・ない。次に、恐れながら下半身を・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ある。
「男になってるじゃないですか、これぇぇぇぇええええええ!!」
「気づくの遅いな」
「いやいや、先生!!何てことしてくれたんですか、これ!!元に戻るんですよね、これ!?」
「ああ、お前が性的興奮したらな」
「せ、性的興奮・・・?」
「要するに、きちんとこいつの
「な・・・」
じゃあ
「にしても、男の姿もなかなか似合ってるな。このままでもいいんじゃないか?」
「よくないですから!!他人事だと思って!!」
このドS先生が!!
「・・・あ、あの、助手さん・・・。よろしくお願いしますね・・・」
「うぅ・・・」
これ、やるしかないもんなぁ・・・。
「分かりました・・・。お手柔らかにお願いしますね、サキュバスさん・・・」
「向こうに丁度いい部屋がある。そこで思う存分練習しな」
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「こ、これって・・・」
私とサキュバスさんが案内された場所。そこは大きなベッドが一つあって、全体的にピンク色の照明が醸し出されて、独特なBGMが流れていました。
「淫猥ですよ、この部屋!!」
「でも、雰囲気は今の状況にあってますよね・・・」
「へ・・・?」
ぐいっ、と私は手を引かれ、そのままぽすんとベットに倒れこまされる。
「ちょ、サキュバスさん・・・?」
「助手さんも早く元に戻りたいでしょうし・・・。ここは一つ、頑張ってみますから・・・」
私はたわわな胸を凝視しながら、彼女に馬乗りにされます。・・・確かに、彼女にとっては
「・・・あっ、ちょ、そこは・・・」
「・・・便利ですね、男の姿って・・・。興奮したかどうか、すぐに分かる目印がついているんですから・・・」
「な、なに、握って・・・」
彼女はためらいもなく、私に新しくできた肉棒を・・・。
「って、触る必要あります!?言動で分かるでしょ、
「・・・念のためです・・・。それに、私、こういうことしていた方が、テンションあがりますし・・・」
「はいぃ・・・?」
「では、いきますよ・・・。
どくん・・・っ!彼女は私と目を合わせて、何か呪文のようなものを唱える。その瞬間、私の中に何かが入ってきたような感覚に見舞われます。
「・・・どうですか・・・?私のこと、好きになりましたか・・・?」
「・・・い、いえ、特に、何も・・・」
あれ?確かに何かされただろうなぁ、っていうのは感じたんですけど・・・。私の身には別に何も・・・。
「・・・ああ、やっぱり、そうですか・・・。だったら、もっとディープに・・・!」
「へ・・・」
するるる・・・。彼女はおもむろに上着とスカートを、私にまたがったまま脱ぎだして、上下ともに下着姿になりました。
「ほら、あなたも・・・」
ぷちぷちぷち・・・。私もされるがままに、上着のボタンを外され、平らな上半身が露わになります。いくら男になったとはいえ、裸を凝視されるのは恥ずかしいですってぇ・・・。
「あの、私・・・むぐっ」
「だーめ・・・」
彼女は私の口を手のひらで遮りました。
「今は、あなたは男なんだから・・・。ちゃんとなりきって・・・。私も、あなたを本気で落とすように、努力するから・・・」
「くぁっ・・・」
彼女は私に男であることを自覚しようとしたのか、ベッドに入った当初からずっと、まるで掌の卵を割らないような繊細さで優しく握っていた肉棒を、少しだけ力強く握りました。
「気持ちいい・・・?もっと、いいことしようか・・・」
今まで敬語だったのに、口調が、大人っぽく、艶っぽく変わるのは、私にも多少の性を感じさせます。ただ、いいこと、って・・・?
「ふふ・・・」
「ちょ・・・」
彼女はその豊満な胸をゆっくりと私の顔に近づけていき、そして、密着させた。私の顔がその胸に
「・・・何だ、どきどきしてるじゃん・・・」
胸と胸を合わせた時、お互いの心臓の鼓動を感じる。私だけじゃない、彼女も同じく緊張している。
「・・・そ、その胸は・・・」
「・・・どうすると思う・・・?」
正直、何をするのか正確には分からなかった。ただ、何かとんでもないことが起こる、そう覚悟したときだった。
「
どくんっ・・・!!!!
「・・・あ、あぁ・・・」
私は・・・、いや、俺は、目の前にいる女を、極まりなく美しい女を見て思った。全身で、感じたいと。
「・・・私のこと、好き?」
「ああ・・・。ああ・・・!」
・・・抱きたい。俺のものにしたい。
「おおおおおおお」
「はい、そこまで」
パチン。
「・・・っ!?・・・あ、あれ・・・?」
私、今、何を・・・?いつの間にか私とサキュバスさんの間には、先生が立っていた。
「
「・・・でも、ここまで相手を追い詰めないと成功しない
「言ったろ、大事なのはきっかけ。最初さえできれば、後はどうとでもなる。試しにフリルにもう一度かけてみな?今、こいつは鎮静している」
「
「俺に抱かせろぉぉぉおお」
パチン。
「な?」
「ホントだ・・・」
「いやいや、私を猛獣にしないでくださいよ!」
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何はともあれ、きっかけを掴んだらしいサキュバスさん。初めのおどおどとした雰囲気はすっかり消えて、何か自信を持った顔をしていました。それは良かったんですけど・・・。
「あのー、先生・・・。私はいつ戻るんですか・・・?」
「ああ、そうだったな」
先生はこつんと一発、私のおでこにでこぴんをします。すると、ぼんっと煙がたって、私は前みたいに胸が実って声も元に戻っていました。
「・・・え。あの、性的興奮云々っていうのは・・・」
「嘘だ。ああ言ったほうが面白そうだったし」
「なぁ!?」
勝手に男にされて、いろいろと危なかったのに・・・。絶対助手を辞めるから、やっぱり私は心に誓うのだった。
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