第4話 無灯の少女
「財布持った、家の鍵…
よし、これで大丈夫。
ごめんなロン、また少しの間お留守番だ」
するとロンは、悲しそうな顔をした。
「そんな顔しないでくれよ…よしよし」
「クゥゥン」
名残惜しさを呑み、ロンに別れを告げた。
「いっちょ頑張るか!」
それから僕は自転車に乗り、一心不乱に駆け抜けた。
見慣れた住宅街を超え、丘を越えて、もう既に今漕いでいる場所に面影はなく、そんな事も心に留める事なく走り続けていた。
「ここは…何処だろう?」
当てもないまま走り続けてどのくらいが立ったのだろうか。
ふと空を見上げると、満天の星が広がっていた。
都内で見た一筋の光だけでなく、無数の光が弧を描きながら流れているのを見て、ついつい感嘆の声が出てしまう。
「うわぁ…すっげぇ…」
望むのなら誰かと見て見たかったな…
ーーーあの時みたいに…
「もっと行くか」
可能性のない空漠たる期待をおもむろに仕舞った。
もうすっかり車通りは少なく、スマホを見たら11時を過ぎていた。
僅かに通る車の光と街灯に照らされて、視界には幻想的な世界が広がっていた。
その通り過ぎた残灯も段々と無くなっていき、
とうとう自分の自転車の明かりと月明かりのみが光源となっていた。
先が見えない暗がりで、僕は1人ぽつんと呟いた。
「ついた…」
何故ついたと思ったのかは分からない。
ただ、そこに誘われた。
そこに来いって、何かが背中を押したんだ。
「こんばんは。やっと…会えたね」
「…………えっ」
ここに来た理由もわからない。
ただ、何も考えずに来ただけなのに。
見知らぬ土地にただ1人、見知った人がそこには立っていた。
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