第3話 記憶に眠っている少女
「やっと終わったー!!ありがとな!湊、可憐!」
「ふぅ…終わってよかった…」
「このくらいだったらそれほど時間かからなかったわね」
授業終わりの放課や、STの終わりで僕は全力で空の課題を手伝った。
幸運にも僕は数学係だったので、多少なりとも提出を待つことができたし、可憐もSTが終わった後に手伝ってくれた。
それから課題を出しに行き校門を出ると、まだ太陽は高い位置にあり、日の長さを段々と実感させられる。
雲一つない快晴の空。
それはとても綺麗だった。
時間帯こそ違うが、まるであの時のような…
ドスッ
そんな事を考えていると、不意に通りすがりの人と肩がぶつかった。
「イテッ!すいません…」
「こ、こちらこそすいません…」
黄と黒のキャップを被り、眼鏡をかけている銀髪の子。
ーーーあれ、何処かで見たような……
「あ、あの!」
僕がそう問いかけたとき、もうそこには誰もいなかった。
「あ?どうした湊?」
「ごめん、ちょっとよそ見してた…」
「あなたらしくないわね、大丈夫?」
「うん、ちょっと…ね」
表情を取り繕いながら答えた。
ーーーどっかで、どっかで見たような…
そんな引っ掛かる感情だけが、心の中を侵食していた。
しばらくして、僕らは分かれ道に着いた。
いつもこの3人が、ここの十字路でそれぞれ違う方向の自宅へと帰る。
「じぁあな!」
空は手を振りながら、足早に去って行った。
「じゃあ僕も、また今度ね」
「ええ、さようなら」
僕は十字路を右折し、真っ直ぐ歩いて行った。
ふとさっきの出来事を思い返す。
ーーーあの子…誰だっけ?
僕自身が知っている事はもう確定した。
絶対に見覚えがあるはず…なのに、全然思い出せない。
「ああ…ほんとに思い出せない…」
どうしようもないちぐはぐとした感情が渦巻いて、不快感を覚える。
家に帰り、1人でご飯を食べている時もその事ばかりを考えていた。
辺りはもうすっかり暗く染まり、スマホの時計は午後9時と表示されていた。
「…………あっ」
その時、大空を横切る一筋の光が視界に入った。
そういえば今日って流星群の日だったな。
「星…か」
明日は土曜日で休みだ。
いっその事、今夜星が見えるところに出掛けてみるか。
金曜日の夜、漆黒に包まれる闇へと僕は不思議と誘われた。
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