第4話 料理開始!

 ……今、なんて? 顔を上げて、と言ったのか? あの空純が? 俺に向けて?

 疑問が無数に頭をよぎるが、俺が思いたいのは一つ。


「優しくな――」


「顔を上げないでください!!!」


「理不尽!!!!」


 空純の言う通りに顔を上げたのに、顔面ビンタされた。

 涙目になりながら、ヒリヒリ痛む頬を撫でる。


 そんな俺を見てか否か、空純の表情が心配する女の子になっていた。……まぁ、ラノベの読みすぎでそう見えるだけかもしれないが。


 ……ふぅ、ひとまず頭を冷やすのが優先だな。色々考えすぎて頭がパンクしそうだし。


「ご飯……食べるか?」


 過去にない良い笑顔を向けて、俺は尋ねた。もちろん殴られないためである。

 簡単に手を出す妹だが、さすがに笑顔の人間を殴るほど性根も腐ってないだろ。


 俺の思惑通り、空純は俯きながらこくりと頷いた。


「よし、んじゃぱぱっと作っちゃいますか! 希望とかあるか? 冷蔵庫のモノでしか作れねぇけど」


「じゃあ…………………………一緒に作ります」


「ん? ……っと、まぁ待て落ち着け殴るなよ? 死んじゃうから、ほんとに死んじゃうから!」


 右手に拳を構えた空純に慌てて訂正。

 何を言ったのかは聞こえなかったが、先の内容から推測することにした。


 ……ズバリ、


「外食を行いたい、とか!?」


「違います!!」


 食い気味に否定され、俺は一歩後ずさる。


 さて、どうしたものか。このままでは殴られるぞ? 一日で三度目のマジ殴り喰らったら、ほんとに死んじゃう!


 ラストチャンスを逃すな、俺! 命は大事に!


「ステーキが食べ――」


「一緒に作るっていたのです! いいんですか!? ダメなのですか!? はっきり言ってください!!」


「おーけーおーけ! もちろんおーけーさ!」


 正直に言えば、手伝ってもらいたくない。なにせ、空純は料理が下手なのだ。


 ――キッチンへ着いた俺たちは、手始めに米を炊く。


「それ、やってもいいですか?」


「水洗いするだけだぞ? やって楽しいもんじゃねぇ――どうぞ、やってください、はい」


 さすがの俺もわかる。これ、殴られるヤツだ。だからこそ、身を引くのを早くしなければならぬ。

 まぁ、米を洗うだけだし、簡単簡た――


「米、全部流れたね」


 洗った米をすべて流しへ。初めて見たわ、これやる人。


 ――先が思いやられるなぁ。


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