第49話 君たちに頼みたいこと 5

「まずは犬探しか」とケイゾー。

「犬は何やるんだ。吠えるのか?」


「いや、犬には中央に座っていてもらう。動かないでいてくれたらいいんだ」


 精霊はおやつを食べるあたしたちを面白そうに見ながら言った。

 動かないでいる。

 それって、簡単そうで難しいんじゃないかな。

 近所に、何匹か思い浮かぶ犬がいるけど、そんな賢そうなのはいない。


 それでも考えていると、ケイゾーがジュースをごくりと飲みほして、指をおりながら、犬の名前を言い始めた。


「ジョンはないだろ」

 そう、ジョンはない。

「あいつはビビリだし」


 番犬に飼ったのに、鳴かないしね。

 雷のゴロゴロに驚いて、うちまで逃げてきたのもジョンだし。

 パニックをおこしたんだ。


「太郎はじっとしてないだろう?」

 うん、太郎はやんちゃすぎる。

「あいつ、誰にでも、うれションするしな」


 そうそう。あれは、困る。よだれもすごいし。


「プリンは室内飼いで外につれ出すのはムリだ」

 美容院のマダムのお気に入りだもんね。

 毛むくじゃらのシーズー。オスだけどリボンがかわいい。


「チョコはかみつく」

 ケイゾー、なでようとして、血が出たもんね……

「あとは……って、使えそうなのはいないじゃん。ダメだ。犬以外でたのむ」


 精霊が困った顔をするので、心配になってきた。

 だって、失敗したら、地球がパカーンなんだもの。


「猫でも……いいかもしれない」


 あんまりよくなさそうな顔で精霊は言った。

 でも、猫だって、中央で座っている、っていうのはきびしい。


「猫はダメだ。動くからな。他は?」とあっさり却下するケイゾー。

「他、か……」考え込む精霊。きれいなみけんに深いシワ。


 まずい。

 地球の運命がかかっているのに。


「動物ならいいのか?」


 なかなか次を言わない精霊に、ケイゾーがしびれをきらせた。


「動かないやつなら、いいんだろ」

「そうだ」と精霊。

「儀式の間、大人しく座っている動物なら大丈夫なはずだ」


 はずって…… 

 本当に大丈夫なのか?


「それなら、アテがある」

 うで組みしてふんぞり返るケイゾー。

「本当、ケイゾー?」


 かっこつけているだけじゃないの?

 でも、ケイゾーは自信満々で、大きくうなずく。


「よし子がいる。あいつならやれるはずだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る