第43話 あんずとケイゾーのバトル勃発 1

「精霊さん。わたしたち、何をすればいいの?」


 ミコちゃんもあたしと同じ気持ちらしい。真剣な顔をしている。


「ありがとう。用意してほしいものがあるのだが……」


 ガチャガチャと音をならして、精霊がこちらに歩みよろうとすると、ケイゾーが両手を広げて立ちふさがった。


「ちょっと待て。おれは納得してないぞ。バケモンだろ。それか悪霊とかだ。おれたちの魂をうばおうって魂胆だな。おれは、だまされねーぞ」


「ケイゾー!」


「おれはこいつらとは、ちがうんだからな」

 

 ちらっとあたしとミコちゃんを見る。

 失望したっていいたげな細目。


「こんな、キラッキラしたヤツ、絶対あやしい。うさんくさい!」

「そうか。すまない」


 精霊がしょんぼりする。

 肩を落とした姿は、胸が苦しくなるほどさみしげだ。

 あたしは、ものわかりの悪いケイゾーに腹が立った。


「ケイゾー、時間がないって言ってんじゃん。助けてあげようよ」

「だから、うそかもしれないだろ」


「『よげんの書』に書かれたことは本当だったよ」


 ミコちゃんだ。彼女も前に踏み出して、あたしの横に並ぶ。

 あたしに賛成なんだ。

 何が何でもケイゾー支持じゃないとわかって、うれしくなった。


「そうだよ、先生のことも、火事のことも、本当だったじゃん」


 ケイゾーにつめよる。ミコちゃんも、大きくうなずいている。


「だから、それがキケンだっての」とケイゾー。


 ケイゾーは、「よく考えろよ」とあたしとミコちゃん、ぞれぞれと目をあわせると真剣な顔をする。彼のうしろでは精霊がまゆをよせて、がっかり顔をしていた。


「よげん、よげんって言ってたけど、火事だって止められなかっただろ。なんの役にも立たないよげんだったじゃないか。それなのに、今回は助けてくれって、なんかおかしいだろ」


「でも、ケイゾーだって言ってたじゃん。守ってくれてるって」


「は?」とケイゾーは目をぱちくりさせる。


「は? じゃないでしょ。火事のときだよ。あれは『よげんの書』が逃げるように教えてくれたから、あたしたちも、中学生も無事だったんだよ。あんた、そう言ったじゃん」


「そんなこと言ったの?」とミコちゃん。

 あたしは、大きく頭を立てにふる。

「そうだよ。こいつ、そう言ったんだよ。あたし、きいたもん」


「い、言ったけど、それは、ちがう。まちがいだった!」

 大声で否定するケイゾー。顔が真っ赤になっている。

「とにかく、あやしい! すぐに信じるなんてバカだ」

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