第40話 何がおこっても不思議じゃない
ドアに体重をあずけていると、ガチャッと、いきなり開いて、うっかり廊下に尻もちをつきそうになった。なんとかバランスをとって体をたてなおす。
「なにやってんだよ」
ケイゾーだ。
肩ごしには、ミコちゃんの心配そうにまゆをよせる顔も見える。
「ノゾムくんは?」
あたしは、なるべくすました態度をとった。
すっ転びそうだったなんて、知られたくない。
……でも、どう見ても、バレてるだろうけどね。
「あいつは帰した。イヤがったけど、ジャマだしな」
ケイゾーは、アニキはつかれるぜって、老けこんだ顔をする。
「んで、なんかあったのか?」
「あ、あった! やばいんだって」
思わず両手をふりあげて、オーバーリアクション。
ケイゾーは、身をのけぞらせて、けげんな顔をする。
「な、なんだよ」
「と、とにかく、見てよ!」
『よげんの書』の暴走。
でも、二人の顔を見て、緊張感がほぐれたのか、今では本のことを、怪物みたいには思えなくなっていた。
だから、「煙がでてね」と笑い話のようにして、部屋の中に入った瞬間、あたしはまた硬直した。
「なんだよ」
うしろがつかえたため、ふきげんな声が上がる。でも、ケイゾーも異変に気づいて、ぴたりと口を閉ざした。ミコちゃんが息をのむ音が、頭のすぐうしろでする。
「だ、だれ?」
あたしは声をしぼり出した。
それから、自然と乾いた笑いをしてしまう。
空気がはりつめると、どうやら笑えてくるらしい。
何がおこっても不思議じゃない。
もう、そんなことは十分わかっているつもりだったけど、これは予想してなかったな。でも、その可能性はずっと、あったのかもしれない。『よげんの書』はあたしに語りかけているって、うぬぼれでも、そう感じていたんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます