第16話 美少女戦士のパンツ

 ミコちゃんは、ずっとケイゾーが好きなのだ。


 なんでミコちゃんみたいに、かわいくてオシャレで優しい、頭もいい女の子が、こんな、うるさくて、何かやっているとすぐ近づいて来ては、バカにしてくるケイゾーなんかをいいと思うのか理解できない。とりえといえば、走るのが速いことぐらいだし、それがどうしたってんだ。


 でも、本当にずっと好きみたいで、幼稚園のころからバレンタインにはチョコをあげている。それに低学年のときの話だけど、お返しにパンツをもらったという面白話まである。


 パンツだよ。パンツ。

 美少女戦士のキャラクターがプリントされているやつだったらしい。


 本物を見せてもらったことはないけど、本当の話なんだろう。

 ミコちゃんは、恥ずかしいから、一度もはいてないし、もう捨てちゃったって言ってるけど、ほんとのところは、どうなんだろう。まだ持ってるんじゃないの?


 パンツはケイゾーのお母さんが、お返しにって買ってきたらしいけど、あたしは、これは「うちに嫁に来い」ってことだと思った。ミコちゃんはちがうって否定するけど、ぜったいそうだと思うんだ。


 だって、パンツだもんね。

 パンツ。


 だから、ケイゾーとミコちゃんは将来、結婚すべきだし、そうなったらいいと心から思っている。それまでにはケイゾーも、ミコちゃん想いのいい男になるかもしれないしね。


 まぁ、あたしはそういう恋愛話は、映画やマンガだけで十分なんだけどさ。だって、どこ見わたしても、キャーッ、かっこいい! って子、いないんだもん。


 だいたいね、うちの学校は一学年一クラスで、クラス全員で二十四人。うち十四人が女子なんだよ。男子は十人しかいなくって、ひとりは無口でしゃべらないし、ひとりは泣いてばかりいるし、ひとりは忘れ物ばかりしてるんだよ。


 一番人気が足の速いケイゾーってだけで、あたしの言いたいことはわかってもらえるんじゃないかな。地球滅亡じゃあるまいし、わざわざ恋愛ごっこに夢中になるにしても、えらびがたいってもんだ。


 それでも、友だちの応援はしてあげる。

 ケイゾーがいいって、ミコちゃんが思うんなら、それでいいじゃん。

 もちろん、ミコちゃんがお相手変更しても、喜んで応援するんだけどね。


 それにしても、二人ははりきっている。

 こっちは、気味わるいのと、怖い気持ちと、それから、ちょっとだけさびしい気持ちがしてるっていうのに。

 二人がワクワクしているのが伝わってくると、さらに心がひんやりしてきた。


「それも持って来いよ」


 ケイゾーがあごで手さげ袋をしめす。


 あたしは「はいはい」とうなずいて、ふぅと息を吐きだした。あたしが見つけた『よげんの書』なのに、すっかり仕切っているのはケイゾーだ。ミコちゃんはそれで満足なんだろうけど、あたしは中心から弾かれたみたいで、もやもやするんだ。

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