第5話 萌え袖と蝶ネクタイとベストと

「のあちゃんは業務用アルコールとか好きだもんね」

なんて店長が死を覚悟した目でぼやく。たぶん店長はM。

「え、店に業務用アルコールおいてくれんの?」

「おけないよ流石に。お客さんになんてもの飲ますの!」

予想外の反応に慌てて店長はのあさんを元居たところの戻す。工場で酔拳する人でも業務用アルコールは嫌々飲んたんですが・・・?

「じゅーん。かえでくんに服を貸してげて!」

店長はのあさんを説得しながらこちらに声をかけた。

「じゃあ行きましょうか。」

じゅんさんは僕の腕をつかむと奥へと連れて行った。暗い通路に入る前少し笑っているような気がした。

男子用の着替え室があり、そこに入った。せっまい・・!俺とじゅんさん二人で入って体が触れるくらいだ。

「なんでこんなに狭いんですか・・・?」

「女の子用に大きめの部屋作ったらこっちにしわ寄せがきてしまいましてね・・・」

そういってハンガーラックにある服をいくつか取り出し、棚の上に置く。


「じゃあ脱ぎましょうか。」

え?

「どうしました?」

「な、なんでもないです。」

じゅんさんはくすりと困り顔をしていた

「かえでさんのサイズに合う服はちょっと探さなきゃいけないんですよ。」

表情はそのままに、ちょっとしゃがんで目を合わせる。う、体が小さくて悪かったな・・・近くで見るとイケメン過ぎて男でも顔が熱くなる。

「そ、そうですよね。じゃあ僕着替えますね。」

後ろを向いてボタンに手を掛ける。何を恥ずかしがってるんだ・・・俺は。

「じゃあ、まずズボンですね。」

「あーズボンですね。え?上からじゃないんですか?」

「先に丈を合わせたほうがいいかと思いまして・・・」

ちょっと困り顔を作る。作っているのがわかった。


「じゅんさんちょっと楽しんでませんか?」

「そんなことはないですよ♪」

♪ついてた。絶対語尾に音符ついてた。

しぶしぶ僕はズボンを脱ぐ。脱がなきゃよかった。

「このズボンも大きめですね・・・となるとこっちのサイズで合わせるか・・・」

なんてまじめに考えてる。ふりをしている。

この人はいったい何が楽しいんだろう。

「先にシャツとベストから合わせましょうか・・・」

そういってズボンを棚に直すと、シャツをあさり始めた。その間トランクスにTシャツ。


「あの・・・ズボン着ててもいいですか・・・?」

「すぐに着ることになるんで。そのままで。」

こちらを向かずにシャツとベストを何着かだす。背中が笑っている。

「いったい何が楽しいんですか!?」

僕は涙が滲んできた。店長より何を考えているかわからない人だ・・・。

「ではこのシャツを着てください。」

大真面目な顔でシャツを渡してくる。Tシャツを脱ぎ、渡されたシャツを着る。これ・・・

「かなり大きめじゃないですか・・・?」

シャツが大きすぎて、ワンピースのようになっている。それに手が置くまで届かずにだらんとなっている。急に大人から子供になったらたぶんこんな感じ。

「そうですか?これはこれでお似合いですよ?」

なんていって満面の笑みを浮かべている。

「確かに袖を絞るには時間がないですし。こちらでいいかもですね。」

そういって僕の服に手を掛け脱がす。

「それじゃこれを。」

そういって、シャツとベストを俺に渡すとちょっと惜しむような目線を向けた。

「できました。ただ蝶ネクタイつけ方がわかりません・・・」

「ああ、それはですね。」

ふわりと綺麗な手が首筋へ触れた。

「あっ・・・」

蝶ネクタイを掴むと首に手を回し、襟を立てて紐を通すと前で結んだ。おもわず声が出てしまう。

「最初は苦しいと思いますが。時間がたつと首の形にゆるんでくるので耐えてくださいね。」

「ありがとうございます・・・」

そういってじゅんさんは「よくお似合いですよ。」と笑った。

「ありがとうございます・・・」

確かにじゅんさんが選んでくれた服をぴったりだった、ふざけながらも真面目に考えてくれていたのがよく分かった。

「じゅんさんとお揃いですね!」

こういう服はいくら自分で探しても似合わなかったのに・・・。

「こんなカッコいい服初めて着れました。ありがとうございます。」

じゅんさんはこちらを見てにこりと笑った。

「なんでズボン履いてないんですか?」

「履くなっていったんじゃないですか。」

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キャバクラなんて異世界もおなじ! ひのえ @hinoe-morisaki

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