戦い?の終結

 「グス、あ〜、やっとクシャミが出た~、全く人に粉をかけるなよ……」


 鼻をすすりながら、鼻声で呑気にそう言うちゃらんぽらん。

 え、どう言うことなの?

 催眠ってさ、クシャミ一つで解けるものなの!?


 「ブヒ、き、貴様!? 我輩達の完璧な洗脳計画をクシャミ一つで崩すとは、一体どういう事なのだ!?」

 「わ、訳がわからないのであーる!」


 あ、アタシが聞きたい事を聞いてくれた。


 「おい、ハゲブタコンビ、お前達バカだろ。 洗脳の粉末なんて素敵な物、存在しないからな。 第一、そんな薬が流通してるんだったら、戦争とか工作活動で使われるだろう? ついでに、そんなものが存在するんだったら、俺の耳にも入るだろうし、ハーレム作るために俺が買い占めるからな!」


 うん、だよね〜。

 あ、でも胸を張って威張る事じゃないからね。

 それと、洗脳の粉末、もし存在したらアタシにも譲ってほしい……。


 「な、なら何で目が赤いのであーる!?」

 「ブヒヒ、そうなのだ! 何で目が赤いのだ! それに涙を流していたではないか!?」


 あ、言われてみればそうだよ!

 なんで目が赤いのだろう?

 それにあの時泣いていたし……。


 「花粉症なの、俺は!」


 あ、そう言えば、始めて会った時に、鼻が敏感で花粉症が何とか言っていたっけ?


 「ならば何故、吾輩たちに話しかけられても、何をされようとも反応しなかったのだ!?」

 「操られていたのではないのであーるか!?」


 そういえばそうだよ、全く動かないでさ、普通にそう思うじゃん!

 流石にそれは、兵士たちも思ったらしく「そうだそうだ」と声が飛ぶ。

 そして、その答えは。


 「俺、クシャミが出そうな時、出るまで固まるんだよ。 だから反応出来なかったんだよ!」


 そう言えば、初めて会った時にそんな事も言っていたような……。

 でも、それには納得できないのが兵士たち。


 「ふざけるな、ハゲ! クシャミぐらいさっさと出せよ!」

 「花粉症なんかになるな! 歩くセクハラ男!」

 「俺達の心配を返せ! 飲み屋破壊請負人!」


 今までの怒りが蓄積されていたのか、そんな文句がちゃらんぽらんに飛ぶ。

 そんな言われように、ちゃらんぽらんは「ハゲじゃないっつーの! ハゲって言う方がハゲだからな!」とか「飲み屋破壊請負人ってふざけるな! お前等がこの前、イエローラインで大乱闘した時、尻拭いしたの俺だからな!」とか言い返している。

 やっぱり王様らしく無いよね、ちゃらんぽらんって……。

 だけどその時。


 「き、貴様達、動くな! わ、我輩達に油断したな!」

 「わ、ワガハイ達を馬鹿にし過ぎなのであーる!」

 「逆らったら、国王の命は無いぞ!」


 言い争いをしているスキをついて、ネズミがちゃらんぽらんの両腕を抑え、ブタがちゃらんぽらんの首にナイフを突きつけ、兵士達を脅す。

 止めた方がいいと思うけどなぁ……。


 「「「どうぞどうぞ!」」」

 「そんなバカな奴、土に還した方が世界の為だ!」

 「バカ! んな事したら、アイツのセクハラ菌によって、その近辺に生える木がいやらしい心を持つだろ!」

 「数年後、このアルセイユ国の近辺にセクハラの森が爆誕するのであった」

 「いやいや、ナンパの森だろ? 可愛い子達が歩く度に、ナンパしてくるんだ」

 「そんな事より、ナンパの森かセクハラの森ができたら、浄化する意味も込めて放火ランナーしようぜ!」


 うん、やっぱり無駄だったね。

 だって口の悪い兵士達だし……。


 「もしそうなっても、儂の家付近の森で土に還すで無いぞ、兵士達……」


 イルイルも捨ててほしくないんだろうなぁ……、真面目な顔で淡々と言ってるし。

 さて、そんな見捨てられた本人はというと。


 「俺をセクハラとかナンパの原因のような言い方は止めろ!」


 と声を上げる。

 ……でも、セクハラ菌の元って感じはするよね、ちゃらんぽらんって。

 そんな様子に、ちゃらんぽらんを人質に取っているはずのミニブタ達は。


 「い、いいのか? 吾輩たち、やるぞ!?」


 とやや焦った声で再度確認をとる。

 だけど。


 「おう、やるならやれよ!」

 「なんだなんだ? 態度はでかい癖に、度胸や体は控えめなのか?」

 「だからアイツ、噂されてるんだろ? 所詮ミニブタだから、いろんな意味で長さが無いってさ……」


 うん、もうちゃらんぽらんの事なんかどうでもいいのか、適当な返事を返す兵士達。

 そしてここでちゃらんぽらんが。


 「馬鹿野郎! お前ら言う状況を考えろよ! あと、その噂を正しく言うなら、いろんな意味で長さが無いから、可愛げがある分、断然本物のミニブタがマシ!っていうのが正しい情報だぞ!」


 なんて余計なことをいうもんだから。


 「ええい、フリード死ね~!」


 とナイフを突き刺そうとするけど。


 「お前みたいに運動も鍛錬もしてない奴が、武術の達人である俺に勝てるわけないだろう、よ!」


 そう言って、ネズミに腕を抑えられているのに、まるで掴まれていない様に軽々と腕を動かし、ブタの腕をつかむ。


 「は、離せ!」

 「話したらナイフが刺さるだろっと!」


 そう言うと、そのままブタの投げ飛ばす。


 「こ、ここは戦略的撤退であ……」


 そして掴んでいた腕を離し、逃げようとしたネズミも、ちゃらんぽらんに腕を掴まれ同じく宙を舞った。


 「よーしお前ら、そのバカたちを捕まえろ!」

 「「「おー!」」」


 そう言って、二人を兵士たちに捕まえさせた。


 「いや、俺は捕まえなくていいんだよ!」


 ついでに兵士たちは、ちゃらんぽらんも捕まえた。


 「だって、なぁ……」

 「女の子の店でのセクハラ大魔王だし……」

 「この前、店の子が捕まえておいてって言ってたから……」


 兵士たちはそう呟いた。

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