魔法少女戦録ブレイズ 討滅の桜花 弐

鋼鉄の羽蛍

――クサナギ桜花編――

ープロローグー

 0話 迷いに震える少女

「あなたへ一騎打ちを申し込む。」


 それは地球と魔界衝突回避がなった直後――最後の地球防衛作戦の時。


 彼女は私の前に現れた。


 それが彼女の最後と分かっていたからこそ――クサナギの誇りの元、一騎打ちを受け入れたんです。


 けど――たった一撃に全てを懸けた、武士もののふとしての戦い。

 私は悟ってしまいました。


 今まではただ野良魔族を討滅するため、その刃を振るっていた――それは紛う事無き正義と確信していたから。


 でも私は、【魔導姫マガ・マリオン】と言う少女を単なる兵器などではない――人間として相手取り、人間として討ち取りました。


 ――即ち――

 私は、私の振るう刀で――人の命を殺めた事に他ならかったのです。


 かつて刀と言う武器が背負いし宿命――

 そこから剣術が生まれ……戦と言う争いの――命のやり取りの中でそれは磨き上げられました。


 覚悟はしていたのに――今、私は自分が振るって来た武力チカラの宿命の重さに……押し潰されそうになっていたのです。



****



 刀と言うその武器は、時はいにしえ……神世の時代より御神体としても存在し――日の本の歴史においては長き戦の中で、戦いの道具として伝わって来た。

 クサナギ家――日の本を守護せし三神守護宗家は、多分に漏れずその力を……神体クラスの力を継承する。


 昨今の宗家においては、クサナギの歴史へ新たなる新章を加えた炎羅えんらと言う当主により――戦い一辺倒の宗家の慣わしを激変させるに至るが、それまでは魔を討滅する剣としての姿こそがクサナギの名の存在意義であった。


 地球と魔界衝突の危機より少し前――クサナギの代表者不在と言う事態。

 そこから来る懸念に振り回されるクサナギ宗家は事を急く余り、未だ幼き少女を当主へと誘い――そして力継承の儀に失態を見た。

 それは少女が後に、力の宿業と直面せざるを得ない未来を招来してしまったのと同義。

 即ち……クサナギを担う少女の背負った業は、浅はかなる一部の大人達の仕業と言えた。



 地球滅亡の危機が一先ず去った日常――宗家重鎮の浅はかさを要因とする事態が、戦い続ける幼き少女へ降りかかる。

 クサナギの当主となった桜花おうかは、訪れた僅かな平穏の中にあって――その武力チカラと言うものに内包される、宿業との戦いへと引きずり込まれる事となる。


 これは、クサナギ裏門当主を継承した少女の葛藤と――新たなる力と意志への目覚めの物語である。

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