14.この道しか

 

 私は今、あなたに生前の私のことをお話しし終えましたが、私は天国と地獄、どちらへ行くのでしょうか。

 自ら命を断ってはいけないとよく言いますが、私にはこの道しかなかったように思えるのです。

 あ、別に天国に行きたいからこの話をしたわけではありませんよ。もし天国に行きたいのなら、自分のした善い行いの話しかしませんから。

 子供の頃に自殺すると親よりも早く死んで親を悲しませたから地獄行きになる、と聞いたことがあるのですが、やはり私も地獄へ行くのでしょうか。

 どうしても、私が死んで母が悲しむとは思えませんが。……あぁ、でも「我が子を愛している自分」が大好きだったから、そういう意味では悲しむのかな。

 え、子供の癖に妙に口調が大人びてはいないかって? 仕方ないじゃないですか。今までずっと周りの顔色をうかがって歩んできたんですから。気にしないでください。

 一体どこで何をしていたら、私は今ここにいなかったんでしょうね。どこで選択を間違えたのでしょう、いつが私の分かれ道だったのでしょう。

 だってほら、生きている人間が暮らす世界では"死"は悪いこと、いけないことという認識が強いじゃないですか。だからきっと、あの世界から言うと私はいけない事をしたってことになってしまうんでしょうね。

 あともう少し頑張って長く生きてたら救われたかもしれないのに、とでも言われていたりして。あともう少しって、どれくらい長いんですかね。絶対少しなんかじゃない。少なくとも私にとっては。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る