帰省

 一年振りに実家へ帰省する。

 上京先から新幹線とバスを乗り継ぎ三時間。

 私と運転手だけを乗せたバスは、濃い緑の山を縫いながらノロノロ走る。

 道が開けると今度は田園が広がる。

 ポツリと現れたバス停で下車し、バスの背中を見送った。

 セミとカエルの合唱が帰省を歓迎してくれた。

 

 照り付ける太陽が暑く、流れる汗をハンカチで拭う。

 ポツポツと建つ家屋と役目を終え朽ち行く小屋を見るともなく見ながら歩く。

 十分程歩いた先、赤錆の浮いた橋を渡ると実家が見えた。

 田舎特有の木造平屋建て。私が育った大きな家。

 祖父が拾ってきた雑種犬のポチが尻尾を振り回し元気に出迎えてくれる。

 ぐしゃぐしゃと顔をこねてから玄関を開けた。

 私の「ただいま」に家族全員から「おかえり」が帰って来る。

 仏壇に手を合わせ、お土産を備えてから他愛も無い話を家族と交わした。


 いつの間にか寝ていた。目が覚めると外は暗くなっていた。

 お腹にはタオルケットが掛けてある。家族の気遣いが有難い。

 縁側で裸足を投げ出しブラブラさせて夜空を眺める。

 空は広く星がとても鮮明に見えた。

「裏の川で冷やしたのよ」母が西瓜を切って持って来てくれた。

 あまり冷たくないけど、とても甘く美味しかった。

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