暗器屋さんと夏
「あ、シオンさん勝手に首の向き変えないでくださいよ」
今ここ、『中根商店』はそこそこの極限状態に陥っている。いつもならしっかり働いている僕でさえも机に伏してお送りしております。
「うっさい。人生の先輩に敬意を払え」
そう言ったシオンは椅子を2つ置いてうつ伏せで寝転がっている。敬意を払いたくなくなる恰好なんだけどどういうつもりで言ってるんですか?
「いや、扇風機を独り占めは戦犯ですよ。店主なんとか言ってくださいよー」
「うーん、暑いからみんな黙って」
「店主珍しいですね。冷たい対応って」
「対応じゃなくて気温的な冷たさが欲しいんだけど?」
「シオンちゃん誰がうまいこと言えと?」
「あーおもしろいーですーさすが人生の先輩だー」
「…コロス」
「ありがとう一気に体感温度が下がったよ傘くんのせいで。気持ちのいいものでは無いけどね」
「そいえばー、もう平成最後の夏ですねー」
佐々木が僕の反対側の位置で伏せている。
「あーそうだったねー」
来年の4月だったっけ?現天皇が今の座から降りるのは。
「なんか平成もあっという間だったわね。最初は『平成』っていう響きに違和感あったけど今は普通になってる。慣れるって不思議な事ね」
シオンがしみじみと言っているが椅子の上に寝転がっているからなんとも言えない。というか
「今って平成30年ですよね?2018年で昭和の最後は1989年だから…シオンさんって最低でも30代ですか?」
「は?年齢なんて関係ないじゃない。見た目よ。見た目さえ良けりゃ良いのよ。あ、言っとくけど生まれてから体をイジってないから」
「生まれてからって、生まれる前に体イジったんですか?」
「…内緒よ。ていうか知らないわよ」
暑いせいかいつもよりもシオンの反応が遅かった気がするけど気のせいだろう。
「白神さんはまだ部屋にいるんですかね?」
「部屋って工房のことですかい?傘くん」
「はい。で、朝から出てきてないから大丈夫かなって思いましてね?」
「大丈夫大丈夫。あの部屋って元々僕の休憩室だったじゃん。」
「あーそうでしたね。それで?」
「だからあの部屋にクーラーついてるんだよ」
店主の何気ない一言に店主以外のみんなの目が変わった。
「総員戦闘用意。本作戦目標は白神の工房の占領だ。相手は白神のみ。だが恐らく凶悪な罠が大量に待ち受けているだろう。舐めてかかるな完全武装で行け!」
「「はいっ!」」
「え?なにこれどういう状況?え?シオンち
ゃんが指揮するの?佐々ちゃんと傘くんはどうしてそんな返事を?今までこんなにシャキッとしたことないよね!?」
「総員!突撃ぃ!」
「「うぉー!(傘、佐)」」
「えー!?(店)」
傘喰、佐々木、シオンがフル武装で白神の工房に突撃するも店を出た途端に夏の太陽の直射日光にやられてすぐに戻ってきたというのはまた別の話
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