暗器屋さんと嘘

ここは『中根商店』。

今日も今日とて客はこないがやるべき仕事はあるそのため僕達はそれぞれの仕事をしていた。まあ、僕の仕事は事務関係だけど。

「お前絶対嘘だろっ!って言いたくなることあるよね」

新しく店に導入した接客カウンターにもたれかかってだらけきっていた店主が突然呟いた。みんなに聞こえる程の声なのでどうせまた誰かと喋るための話題提供だろうから適当に答えておいた。

「あーはいわかりますわかりますー」

「そういうのだよ、傘くん。絶対わかっないよね?適当だよね?」

「30分アニメとかのCMの前とかで『まだまだ続くよっ☆』とか言って来るやつとかかしら?もう後5分位しかないのにまだまだ続くわけないじゃないのっ!1時間スペシャルって毎回信じてた私が馬鹿みたいじゃないのっ!」

いつものごとく自分の銃をメンテしていたシオン(店の商品はメンテしない)が僕と店主の会話に入ってきた。

「シオンさんってアニメとかって好きなんですか?」

「あ〜うんそうだね。アニメって言っても幼女向けアニメだけどね」

シオンが理不尽に切れているなか、外野の白神と佐々木の話している内容を聞きながら作業を進めているとふとシオンがハートキャッチな衣装に身を包んでM82を構えているのが頭に浮かんでしまい物騒だなーとしみじみ思ったりした。

「店主〜他に『嘘だろっ!』って思うことを教えてくださいよ〜」

「1つ話をしよう。それは小学生の時だった」

おい。店主1人語り始めやがったぞ。

「あの頃は俺もまあ、少しワルやってたんだ」

おい、なんか喋り方おかしくなってんぞ。

「その時にちょっくらヘマしちまってな...クラスの女子の椅子に生クリームを塗りたくってる所を教師に見つかっちまったのさ」

女子の椅子に生クリームを塗りたくるってどういう性癖晒してんだよ!さらに小学生だぞっ!早すぎんだろ!

「そこで教師に言われたんだ。『絶対に怒らないから言いなさいってな』もちろん怒られないと信じてすぐに言ったさどうなったと思う?叱られたさこっぴどくね」

「「「当たり前だよっ!」」」

「どうしてだい!?先生が絶対って言ったんだよ?先生なのに!」

「てめぇばっかじゃねえの?つーかどういう性癖してんだよ。怖ーよ。怖すぎんだろ」

「・・・最低ですよ。店主さんってそんな人だったんですね...」

「いや、来ないでくれます?ほんとマジで」

店主の過去のまさかのカミングアウトに女子勢が一斉に引いているけど、うん。流石に僕も引くわ。こいつ元々やべぇなって思ってたけどここまでとは...。

「いや!?違うよ!僕の話じゃないよ!友達のラーウェル・B・ホエルの話だよ!」

誰だよラーウェル・B・ホエルって。今更言われても信じらんねぇよ。

「何言ってんのよクソ変態野郎が。てめぇみてぇなカスがいるからこの世はよくなんねぇんだよ」

「いや、ほんとに僕じゃないからホエルだから!なので僕に突きつけてるブリーチャーを離してくださいお願いしますっ!」

「そうだ!新しく出来た****を試してみましょう!」

「ごめん。白神ちゃん何言ってるか聞き取れなかったけどヤバいよね多分。」

「聞き取れないことって大抵重要な発言とかですからねってか最近何でもかんでも店主が悪いオチでいいやっていう傾向が出来てません?」

「「「そんなこと私たちにはしらないからどうでもいいから店主を粛清します!」」」

宣言したっ!意味わかんねぇけどやべぇぞ!あの女子達が攻めてきたら…店主は…見るも無残に殺されていくんだ!

「逃げろ!店主!逃げるんだ!」

店主は僕の声に即座に反応し、腰をかがめ、地面に手をつき、土下座するかのように見せた。

「なによ、店主土下座して済むと思っているのかしら?」

「思ってないです!」

が流れるかのような動きでクラウチングスタートで店をダッシュで出ていった。

「店主!貴様ぁ!」

それを追ってシオンも慌てて店を出ていった。

「あ、そういえば『一生に一度のお願いだから!』って言うやつも『嘘だろっ!』て思ませんか?」

「確かにね。でも実際にそれ言う人いないですよね。1回でも言った人いました?」

「あ〜そうですね〜。まあ、アニメとかドラマでならよく見ますけどね」

「『アットホームな雰囲気の職場です』って求人情報に書いてあってもうわぁって思いますね。そういうのは大抵ブラックか古参兵だけの間がアットホームとかでろくな会社じゃないですからね」

「白神さんはここに来る前にそういうのに引っかかったりしたの?」

「はい。私がやったバイトは必ずと言ってもいいほどアットホーム嘘ばっかりでした。」

「壮絶なバイト人生を送ったんだね…」

「まあ、実験も兼ねてたんですけどね。傘さんと佐々さんはそういう経験は?」

考えると以外に出てこないものだ。うーんなんかあったっけなー。

ふと隣を見てみると佐々木もうーんと唸って考えていた。

「意外とうーんとか言って考えてる人ってなんも考えてないですよね。ソースは僕」

「自分でわかってて『嘘だろっ!』て思われることを言うのはあんま良くないですよ?」

「佐々さんも言えないですよ。さっきからやってますもん。それ」

「うーん...やってるかな〜?そういうこと」

「またやりましたよ。佐々さん無意識って一番悪質ですよ」

「これから気をつけてみるよ〜」

「ほんとですね?気をつけると神に誓えますか?」

「はい、誓います」

この神に誓えますかっていう下りも日本人からしたら『嘘くさっ!』てなるよなー。っていうか

「シオンさんと店主はどうします?回収してきます?」

「場所は分かってますか〜?」

「いや。知らない」

「じゃあいいですよね。白神さん」

「え?はい私もいいですけど」

「そういえば俺が責任をとるっていう上司も『嘘だろっ!』て思うんですよ」

「まあ、ここの上司はそんな格好いい事言ったことないから人畜無害って感じがありますね」

「上司は良くも悪くも目立たなかったりかっこつけない方が良いのかもですね」

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