暗器屋さんハラスメント

「「「「ありがとうございましたー」」」」

今日も気の抜けたような声が響き渡るここは恐ろしいほどの田舎に存在する駄菓子屋のような外見の店。『中根商店』

ちょっと前までは張り切って挨拶していたはずの白神もダラダラしてしまっている。まあ、いつまでも溶け込めないよりはいいんだけどね。

「そういえば、みんなって『ヌーハラ』って知ってる?」

店主が突然誰にでもなく話し始めた。

「なにそれ。公衆の面前で素っ裸になるってやつ?」

「シオンさん。なんでそういう方向に行きますか?それ普通に犯罪ですよね。変質者でいいじゃないですか」

「うるっさいなー。なにマジレスしてんのよ。傘喰はわかってんの?えぇ!?」

「わかってますよ。って言うかシオンさんこそむきにならないで下さいよ。ヌードルハラスメントの略でしょう?店主」

「うん。それそれー」

店主の同意の声に案の定シオンが食ってかかった。

「えー、1文字足りないだけじゃないの。私のヌードは正解でよかったんじゃないの?」

「いやダメでしょ。食べ物が人前であまり言いたくない言葉になるんですよ?」

「いいじゃない。ヌード。ヌード。ヌード。ヌード恥ずかしくないわよ」

「女の子がヌードなんて連呼するんじゃありません!」

いつか突っ込んでも意味がなく収集がつかなくなってきたから店主に目で「進めて」と送るとシオンのヌードコールを遮って続けた。

「はいはいシオンちゃんヌードはヌードだね。で、意味は知ってる?」

「意味はヌードルハラスメントって日本に来た外国人さんとかが『麺類をすする音』に対して感じる嫌悪感のことですよねー」

「さすが白神ちゃん。説明ありがとう。で、ここからが本題なんだけど...」

ここまでは前置きか。とすると今から何を話し始めるんだろうか。

「最近何でもかんでもハラスメントってつけてないかな。麺類ってすすって食べないと汚いって思われない?っていうかどうでもいいから![カスタマーハラスメント][フォトハラスメント][レリジャスハラスメント][ラブハラスメント][パーソナルハラスメント][家事ハラスメント][ゼクシャルハラスメント][終われハラスメント][ソーシャルハラスメント][エアーハラスメント][スメルハラスメント][ペットハラスメント][マリッジハラスメント][シルバーハラスメント][エイジハラスメント][エレクトロニックハラスメント][テクノロジーハラスメント][ブラッドタイプハラスメント]...ざっと調べてこんなにあったよ!日本人こまかすぎんやろがい!多いわ!多すぎるわ!まじざっけんなや!ちょっと前に[カスタマーハラスメント]が来たよ!ふざけんな!あいつ客の自分から客は神様って言っちゃったよ!クレーマーでいいだろがっ!」

「て、店主相当溜まってるねー」

シオンが若干引いていった。まあ僕も含めて佐々木も白神もガン引きしてるんだけどね。

「最近無かったんだけどね。ちょくちょくあんなふうに爆発するのよ。みんなはあんな風にならないように気をつけるように!」

「「「は、はぁ」」」

どうして今のタイミングで爆発したのか分からないけど爆発した店主を見てみると少し落ち着いたのかその場で体育座りしてブツブツ言っている。

「「「「正直めんどくさいなー。あれ」」」」

みんなほぼ同時に呟いた。

「やっぱりみんな思ってました?」

「いちいち調べるかね?ムカついてる物事に対して」

「あーたしかにそこ気になりますねーなんかやり方がねちっこいというか」

「男らしくないですよね。昨日新しく作った『ささくれ製造キット』を店主で試そうとしたらやめてくれって泣きながら土下座してきたんですよ」

「あーうん。それは僕も店主と同じ行動するよね。というかその『ささくれ製造キット』について詳しく」

「・・・白神に喧嘩売るのはやめた方がいいなこりゃ」

「地味に嫌な拷問とかされそうですねー」

今のめんどくさ店主を放置して4人で愚痴タイムと洒落こんでいた。口より先に手が出そうだよここ。なんかやっぱめんどくさいよな。この店。ほんと帰りたい。

あ、店主今どうしてるのかな。さっきからブツブツが聞こえなくなったように感じたけど。そう思いながら店主に目を向けると怒り疲れたのか寝息を立てて健やかに寝ていた。

「子供かよ」

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