暗器屋さんと森のくまさん
「いらっしゃいませー!」
今日も田舎に声が響き渡る。しかしこの若干うわずった緊張している声は白神だろう。僕たちが失ってしまった『大切なものやる気』があってよろしいその気持ちいつまでも大切にしてね!
「あのお客さん月1で猟銃と特殊弾を買ってく人ね。そこそこ良いもの買ってってくれるし店主とそこそこ仲が良いの」
「へー、猟銃っていうことは漁師さんですかね。というか常連さんなんてこんな店にいるんですか」
ずっと僕の隣で自分の銃のメンテナンスしている(店の武器は絶対メンテしない)シオンと適当に話していると白神と客の様子がなんかおかしくなってきた。
「は、はい。えーと、店主を呼んできますのでちょっとお待ちください」
白神はそういい残し、慌てて店主がいる奥の方へ引っ込んでしまった。
「おやおやー?なんでしょうかねー?」
「さぁ?」
「シオンさんはなんか分かりますかー?」
「わたしが知るわけないでしょ?」
「何となく知ってそうな感じがしましてねー?」
「一応この3人のなかで一番年長ですし。っていうか何歳ですか?」
「・・・わたしの年齢聞いてどうするのよ」
「なんで年言うのをそんなに渋るんですか?なんかやましい事があるんですかい?どうなんですかい?えぇ?」
「・・・そうそう!新しいライフルが届いたのよ!見てみない?」
「「シオンさんそんな程度で話題切り替えれると思ってるんですか?」」
「ぐぬぬぬ…あ!店主達が出てきたわよ!」
シオンにうまい具合に逃げられてしまったが店主と白神と客のやり取りがすごい気になる。話している内容は分からないが店主と客は楽しく談笑している。白神は蚊帳の外でキョロキョロしてかわいそうなんだが…。
あ、店主が怒って灰皿で客の頭ぶん殴った。客もキレて椅子の足を持って殴り返した。あらら、大乱闘になっちゃった。と思ったら握手して仲直り?ワケわかんないんだが。
客が店から出てくといつものように店主が今回の仕事について説明してきた。たぶんさっきなにやってたのかも聞けるだろう。
「みんな聞いてた?今日の仕事は熊退治だよ。」
熊退治?
「あのー、店主?私たちって復讐専門なんですよね?ってまさか熊に色々やられたからその復讐でって言うんですか?まさかですけど。まさかなんですけど!」
佐々木も熊退治について気になったのかそんな質問をしていた。たぶん佐々木の仮説は正解でいいと思う。だって店主がうんうんって頭を振ってるもの。なんかこの店何でも屋っぽくなってない?大丈夫?
「ザッツライト!」
うん、何でも屋になったね。この店適当に復讐したいって言えば何でもやってくれる便利な店になっちゃったね。
「まあ、と言うことで続けるよ。熊は自治会の連中が仕留めようとして壊滅した様子。50人で討伐しに行ったけど帰ってきたのは15人」
「15人ですか。それって素人半分以上で行きましたか?」
「全員熟練ハンターだったようだよ。猟銃も持っていったらしいし」
「そもそもどうしてその熊に対して50人なんて人数で行ったんですか?」
「討伐対象の熊は結構前から問題になっていたんだよ。山の麓の家畜を喰いあさったり畑を荒らしたり色々。その度に討伐しようとしてたんだけど逃すとか殺しきれないとかじゃなくて見つからないんだって」
すごいな。熊にもハイディングスキルがあるんだねーそんなんに僕たちが勝てるのかねー?これって死んでらっしゃい見てらっしゃいってやつですか?
「まあ、受けちゃった任務は仕方ないから熊狩りに行こうか」
「「「「おー」」」」
5分後、裏山にて
「猛獣狩りにいっこう!猛獣狩りにいっこう!ふっふんふっふんふふん!」
「『猛獣狩りゲーム』でしたっけ?懐かしいですね。というか作者はどういうつもりで作ったんでしょうね」
「猛獣狩りにいこう!って楽しみながら言うとかモン〇ンにはまってる時に作ったんじゃない?」
「ぜはー、ぜはー。みんな若いね~」
『中根商店』のメンツは目的の熊を店の裏山で探していた。
「なかなか見つかりませんね~」
「そうね。うーん…山燃やす?」
「火討ちはダメだから探しに来てるんじゃないですか」
シオンが火討ちを提案したのは流石にやべぇと思ったから止めたけど正直熊一匹を探すのはかなりだるい。スキップ機能がない周回ゲー並みにダルい。
「罠って使ったことがあるんですかね?」
そう言った佐々木に対して店主が返した。
「あるらしいよ。ハチミツぶちこんだけど翌朝みてみると金属の檻がぐちゃぐちゃになってたんだって」
「本当に化けもんですね。その熊」
金属ぐちゃぐちゃの熊さんに出会いたくねー!どんどん後付け後付けで強化されてないっすかね?
「何回ぐらい罠をやったことあるんですか?」
「10回ぐらいらしいよ」
「流石に10回もやれば檻=カスって安心してますよね。たぶん」
「「「うんうん、で?」」」
「今日は山でキャンプしませんか?」
辺りはいつにもまして暗く、木々の影も見えないほどの闇に包まれた。そんな中を悠々と歩む1つの巨体があった。
この巨体は恐ろしくでかい熊だった。通常の熊の2,3倍はあるだろう。
「・・・・・・」
熊は鼻を上を向け、臭いをかいだ。
今日もいつものように人間がのし掛かったら直ぐに壊れる箱に大好物のハチミツを入れていったようだ。若干人間の臭いが強いが最近来た人間達の臭いがまだ残っているのか。まあいい。
「・・・・・・・」
ハチミツの臭いに近づいていくが人間の臭いもだんだん強まってくる。全くもって分からない。脆弱な人間が私に何をしたいのか。捕まえたいというのならもっと頭を使うべきだ。
熊は目の前の檻を嘲るように鼻をならすと後ろ足のみの2足で立ち、前足を天高く上げ、檻に向けて振り下ろ──
「「「来いよべ〇ット!」」」
前足を上げるとハチミツまみれの人間達が現れ──そこで意識が途絶えた。
「「「来いよべネッ〇!」」」
熊が目の前に来たのがわかった瞬間にハチミツで全身をデロンデロンにして隠れていた傘喰、佐々木、店主がそれぞれの得物を頭に向けて叩きつけたのだった。
「案外楽でしたね」
「うーん、佐々ちゃんだけでよかったんじゃないかと思うのは僕だけでしょうか?傘くん」
「うん、僕もそれ思いましたよ。だって切れ味がうりの刀が肉まで入り込んでませんもん。毛の強さが異常ですよ。鎖かたびらですかこれ」
まともにダメージを与えられてない僕と店主に対して佐々木の愛用しているバスターブレードは熊の頭蓋骨を見事に叩き割っている。単純に猟銃よりも威力が高いということになるんだが大丈夫なの?このパワーバランスの崩壊。
「クエストクリアってことで帰ろうか。佐々ちゃん、頭ぶったぎって持ってきてね」
某狩りゲーのクエストクリアの判子のSEとBGM が聞こえた気がした傘喰であった。
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