暗器屋さんと面接

「「「「いらっしゃいませー」」」」

今日は珍しく昼間に客が来た。珍しいのは時間帯だけでなく、佐々木と同い年くらいに見える少女だった。サラサラな茶髪のショートボブで前髪は伸ばしており、目元を隠している。たぶん目を合わせるのが苦手な分類の人だろう。僕と同じだ。

「あのー、私は客じゃなくて面接に来たんですけど」

客の訂正を聞いて店主が思い出したように反応した。

「あー、はいはい白神さんね」

「はい、そうです」

こんな店に面接とは珍しい、というか来るんだねこのいつ死ぬかお巡りさんにピーポーされるかしてもおかしくないアットホームな職場に。

「じゃあ、今からやりますので奥へどうぞ。佐々ちゃん、傘くん、シオンちゃん、店を閉めて来てね」

「「「はーい」」」

適当に宇宙戦艦風のカーテンを閉めたりドアプレートを『閉店』にしたりレジに鍵かけたりした。僕だけが。

「すいませーん佐々木さーん、シオンさーん」

「「はーい」」

「あんたらも閉店作業しろよ」

「「嫌だ」」

「ですよねー」

こんないつものやり取りをしていると片付けが終わってしまった。白神さんこの店の従業員になってくれないかなー。一見まともに見えるから横にいるダメ従業員達とチェンジしてほしいもんだよ。

「傘喰、私は絶対に辞めないから」

「シオンさんに同意です」

「だったら働けっての、終わったんで行きましょうか」

三人で店主達がいる休憩室代わりにしている会議室っぽいとこに行くとすでに椅子三つ、机、椅子の配置で置かれていた。

準備万端ってかんじか。ていうかぽんぽんの野郎壁紙だけじゃなく机から椅子から照明まで何でもかんでも宇宙戦艦スタイルになってやがる。まあ、色々自動になってて便利になってるからいいけどね。

「はやいね、さすが傘くん」

「分かってますよねー、横の二人が働かないことぐらい」

シオンと佐々木がへっ!というように顔が歪んだ。せっかくかわいいのにもったいない

「うん、どうでも良いけど始めましょうか、白神さんお座りください」

「はい、失礼します」

懐かしいなー僕もこんな感じで面接したなー

「えーと、まず履歴書とお名前を」

「あ、はい。白神奈乃しらかみ なのです。お願いします」

「はーい、よろしく。新卒なんですね。…東郷大学」

「「「東郷大学!?」」」

「なんで東郷大学まで行った人がこんなクソみたいな所に就職するんですか!?」

「そうですよ!なんでこんなゴミ以下が集まった場所に!?」

アホ?アホなの?面接に来た人の前でそんな事言っていいんですか?「いぃんです!くぅぅ!」なんて言わせねえよ。

「シオンちゃん…佐々ちゃん…言い過ぎだよ…僕なりに頑張って来たんですよ?ね?わかるでしょ?」

店主はもうダメだ隅で三角座りしてぶつぶついってる。シオンと佐々木もディスるだけでダメだ。なんだよこの店。こんな店潰れちまえよ。

「店主はメンタル鍛えて来やがれ。佐々木ちゃんとシオンさんは黙ってろ。という事で、自分、傘喰が引き続かせていただきます。よろしくお願いします。」

「あ、どうも」

へー色々資格を持ってるようですねー。ほう、ほうほう、趣味特技が気になるところですが…工作?

「えーと、趣味、工作とありますがどういう物を?」

「はい、主にあなた方が使用するような物を」

「合格、異論は認めない」

即答してしまった!本当に欲しかったんだよメカニックキャラ!その上、静かそうで良いじゃないですかやだー。

「という事で明日からお願いしますね」

「あ、はい」

白神が帰る後ろ姿を見送った。

白神はどうしてこの店に来たんだろうか?大企業に入れると思うんだが。なんとなく仲良くなってきたらそれとなーく聞いてみようかねぇ。まあ、帰りますか。

「佐々木ちゃん、シオンさーん、帰りましょうか」

「「はーい」」

「ところで傘喰さん。店主はいいんですかー?」

佐々木が思い出したように言った。

そういえばいたなーそんな奴。

「…帰りましょうか」

「その間はなんですか?シオンさんもなんか言ってくださいよ…ってあれ?」

佐々木がシオンを探してキョロキョロしてるとシオンはとっくに店を出ており、窓から手を振っていた。

「「なにあのロリっ娘かわいくない?」」

「一緒に帰りたいんですかね?」

「どうだろう?まあ、待たせるのも悪いし帰ろっか」

「そうですね」

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