暗器屋さんは語りだす

「「「「ありがとうございましたー」」」」

今日も山に囲まれている駄菓子屋風の店から少し気の抜けた声が響き渡る。

ここは『中根商店』のんびりとした駄菓子屋風の見た目とは正反対の復讐者用の暗器や兵器を販売、レンタルしている。

「もう終わりにするかい?」

黒髪の清潔感のある青年である通称、店主が店を後にした客の背を見送ると口を開いた。

「あーはい、終わりますか。」

店主の声に最初に反応したのが高校生ぐらいの年の青年、僕、傘喰だ。

「ふー、終わった終わった。」

「まだ終わるとは決まって無いんだけど…」

店主が終わりにするか聞いただけなのにもう終わった気になっているのは金髪ツインテールのロリっ子、シオンさん(しかし20歳はこえている。俗に言う合法ロリだ。)に真っ向から店主が否定した。

「どうでもいいわよ」

「よくないよ!?というか、僕って君の上司だよね?ときどき自分でもわからなくなるんだけど…」

先程のシオンさんと店主のどちらが上司なのかわからなくなってくるようなやりとりを店の片付けをしながら聞いていた佐々木が店主とシオンさんに尋ねた。

「そういえばシオンさんと店主っていつからの付き合いなんですか?」

確かにそれはシオンさんに会った時から僕も気になっていた。しかし、気になっていたが聞く勇気がなかった。ちょっと前(『暗器屋さんとゾウ用銃』参照)にシオンと店主の出会いは15年前と聞き、シオンの愛銃であり、ゾウの頭蓋骨を楽々粉砕できると言う、『プファイファー・ツェリスカ』の威力とシオンさんの精度を見て以降下手に聞くと僕がこの世とバイバイしないといけなくなってしまう恐れがあったからだ。

「なに?佐々木いきなりそんなこと。」

「いやー、ちょっと気になっちゃいまして。」

「そう、思い出して過去に浸るっていうのもいいかしらね…そう、あれは今から36万…いや1万4千年前の…」

うん?

「すごいですーシオンさんそんなに生きているんですか!!」

シオンの先程の言葉を純粋な佐々木が真に受けて驚いている。

「 私にとってはつい昨日の出来事だが 君たちにとっては多分明日の…」

おや?

「彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか確か最初に会った時は…」

ここまで来て確信した傘喰が我慢できずに口をはさんだ。

「すいません、もういいです。」

「何よ。まだ始まってないのよ?」

途中でとめられたシオンさんは若干イラついた様子でこちらを見た。

「いや、もう結末わかってますからいいです。」

え?と言いそうな顔で佐々木がこちらを見ているが僕は続ける。

「そんな話で大丈夫か?」

「大丈夫だ問題ない。」

「「…パシッ!」」

シオンさんと僕は無言でハイタッチをした。

またしても佐々木はえ?と言いそうな顔でこちらを見ているがシオンは無視して続ける。

「傘喰、名前が何通りある。」

「はい。72通りです。」

「正解」

僕はガシッとシオンさんと握手して2人で感動を共有した。ネタが伝わる人がいると良いよね。学校だと話相手いないから…。

「店主ーなに言ってるんですかあの2人。」

「さあ?」

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