暗器屋さんと主婦アイテム

「「「ありがとうございましたー」」」

先程までいた主婦風の客が満足そうに店を後にした。

「店主ー、さっきの人ってなに借りてったんですか?」

「うん?傘くん気になるのかい?さっきの人は製氷器を借りていったんだよ。」

傘くんと呼ばれた高校生くらいの青年、傘喰は店主(本名は誰も知らない)にさっきの主婦が借りていった物を尋ねた。

「え?製氷器ですか?あの、氷作る?」

「そーだよー、氷作るやつ。」

製氷器を使ってどうやってやるんだ?

「傘喰さん、それはですね。氷でナイフを作るんですよ。」

店主の代わりに傘喰に使用方法を教えたのは黒髪ストレートの唯一の女子、佐々木が床の清掃作業にキリをつけ、口を開いた。

「そんな物で?って顔してますねー、普通に考えてくださいよ、ちょっと尖っていれば刺さるじゃないですか。ついでに布をグリップにすればもっと楽に。」

へーそんな考えで。

「そのとーりだよ佐々ちゃん。使った後は鍋にぶちこんで水にして捨てれば簡単に証拠隠滅できるからねー。」

「凄いですね。というかそんな物もこの店にあるんですか?」

傘喰がそう聞くと、店主は自慢気になって言った。

「ここには色々あるよー。製氷器の他にも…例えばこれ。」

「えーと、これは…コップですか?」

店主が差し出した物はただのコップだった。

「そう、コップ。」

「どんな使い方をするんですか?」

少し気になった様子で傘喰は聞いたのだが、まさかの解答が返ってきた。

「簡単だよ。こう、殴るんだよ。」

店主は手に持っていたコップを上から下に振りながら言った。

「え?殴るんですか?」

「うん、そうそう。ちょっと底に重りを仕込んであるから女性みたいに力が弱い人でもいけるんだよ。」

「か弱い私もできる重さですか?」

「あのー、佐々木ちゃん?佐々木ちゃんって腕力が…」

「なーんでーすかー?傘喰さんー?」

佐々木の後ろからどす黒いオーラが出ていた。誰が見ても分かる。こいつはヤバイ、手にもっているモップがみしみし悲鳴をあげている。完全に対戦車地雷を踏み抜いた。

そんな僕は、

「な、なんでもないよー。店主!ほ、他には何かありますか?」

ただ棒読みで否定して話をそらす事しか出来なかった。

「まだあるよー。次は、これ。」

といって差し出したのはアイロンだった。

「これの使い方は?」

一見ただのアイロンなのだが…また撲殺か?それともスチームで…しかし、威力が足りないか…?

「これはねー魔改造アイロンでねー。普通のアイロンの蒸気の火力を上げた物だよ。ちょっとした拷問をしながらしたい人用だね。あ、もちろん撲殺もいけるよそこそこ重いから。」

なんだそれ。火力とか普通言わないよね?火力っていうか、温度だよね?というか結局撲殺ってなにででも出来るんじゃないか?

「たまにこれでアイロンがけするんですけど、そこそこ時短できていいですよ。」

「へー?佐々ちゃんそんな使い方してたんだねー。僕もやって見ようかな。」

「コツとか要らないんでいいと思いますよ。」

「これって実際にお客さんに借りられた事ってあるんですか?」

「うーん?ないかな。佐々ちゃんの時には借りられたことあった?」

「無いですね。」

速答だった。

何のためにこんなの置いてあるんだよ…

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