暗器屋さんは考える

「「「ありがとうございましたー」」」

先程までいた中年のサラリーマンが黒くて大きな肩掛けバッグを持って店を出ていった。

そこで恒例にもなったこの質問をした。

「店主、さっきの中年サラリーマンってなに買って行ったんですか?」

店主と呼ばれた20歳くらいの黒髪の青年が答えた。

「さっき売ったものはね…C4爆薬35㎏だね。」

「へー。でも何のためにですかね?」

「本人にさらっと聞いたけど「社畜してやる…あの…社畜会社を…」だとか言ってたよ。」

なんだそれ。社畜すんなよ駆逐しろよ。

などと、考えていると横にいるこの店唯一の腰まで伸びた黒髪が特徴的な女子。佐々木が会話に入ってきた。

「どうやって社畜するとかは?」

「さあ?でも良い機会だね。みんなで推測してみよう!」

「「えー」」

「えー、じゃないよ。2人とも考察力が無いんだから鍛えようよ。」

考察力って言ったってこの店で鍛えられるものとか色々あって十分なんだが。例えば殺人術とか自殺方法とか復讐方法とか法に触れない外法行為とか…ろくなもんねえな、おい。将来何になるんだよ。

「は、はい、やりましょうか…」

「そ、そうですね…」

佐々木も同じことを考えていたんだろう。佐々木も冷や汗を流していた。

「じゃあ…傘くんから。」

爆薬を使ってやること、会社を社畜する…

「社長室を爆発?」

「ほー、そう来たか。傘くんらしい要点だけを潰すスタイルだね。佐々ちゃんは?」

「そうですねー」

そういうと、佐々木は少しだけ考えた素振りを見せ、続けた。

「ビルの柱を爆破してビルもろとも潰すかな?」

「おー!考えぶっ飛んでるねー。さすが佐々ちゃん。他には?」

「自爆テロ?」

「社長にC4爆薬叩きつけて撲殺?」

「社長の喉に詰め込んで?」

「ちょっとちょっと!2人共!最後の方は爆薬の意味ないよね!?」

「これも考察力が鍛えられてますよ。ね?傘さん?」

佐々木が僕の隣で店主に反論しながら傘喰に話を振った。

「そうですね。一応考えていますから良いですよね。ところで店主の考えを聞いてみたいですね。佐々木さん。」

「聞きたいですねー。さぞかし凄い考えがあるんですよね?店主?」

ここで佐々木が店主にキラーパスをした。

「え、ええ?」

「そうですね!僕達には思い至らない程の凄い意見が出るんでしょうね!」

佐々木からの突然のパスに混乱する店主を面白く思い傘喰も追撃を加えた。

「え?…えーと?」

「さあ!店主!」

「店主!お願いします!」

「えーと、会社のトイレを全て爆発…うわぁぁぁぁああ!」

店主が度重なるプレッシャーに耐えかねて爆発して店の窓を割って逃げ出した。

「うわぁ…やり過ぎちゃいましたね…」

「そ、そうだね…」

2人は少し反省したのだが。




20分後

店のドアが開かれ、店主が帰ってきた。

さぞかし低いテンションな店主かと思った2人は最高速度で謝罪した。

「さっきはすいませんでした。やり過ぎました。」

「すいませんでした。」

店主の反応が気になった2人が顔をあげると。

「お疲れ様ー、さっき焼き芋屋の車が通ったから買ってきたんだけど食べる?最近見ないからつい買っちゃったんだよー。2人は焼き芋好き?僕は好きだよ。あ、でも焼くよりも蒸した方が好きなんだけどね。そう言えば…」

いつも通りのヘラヘラしている店主が存在していた。

「「…さっきの謝罪返してくれませんか?店主。」」

「え、なに、2人共怖いんだけど。というか佐々ちゃん、その底が分厚いコップを下ろしてくれないかな?傘くんも魔改造アイロンを下ろしてくれないかな?ちょっ来ないで!いやぁぁぁぁぁ!」



4日後

「怪我治りましたか?店主。」

「もう治ったけど精神的な傷は一生癒えないかな?」

「店主はその傷は生きて行くための教訓にしていくと良いと思いますよ。」

いつものようにBGMとしてニュース番組をつけていると、とあるニュースが耳に止まった。

『本日10時22分、東京都足立区の企業ビルで爆破事件が発生しました。爆弾はトイレに…』

「「あり…えない…」」

傘喰と佐々木が唖然とした顔で店主を見ると店主はどや顔で返してきた。

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