第39話

「あたしのことが、きらい?」


「ええ嫌いですよ。涼宮さんだけじゃなくて、古泉君も長門さんもキョン君も大嫌いです」


 朝比奈さんのトロンとした目が澄んだり曇ったりしてきた。


「嫌いでした、みんなのことが。涼宮さんはいつもキョン君のそばにいました。そしていつも私を邪魔者扱いしました」


 朝比奈さんは肩で息をしていた。


「古泉君も嫌いでした。いつもは笑っているけれど、いざという時は私達を裏切るつもりだから」


 朝比奈さんは持っていた銃を震わせ、鶴屋さんから照準が外れた。その瞬間、長門が朝比奈さんに掴みかかろうとしたが眉間に銃を突きつけられた。


「長門さんも嫌いだった。冷たいですし怖かった。どうせ私のことを心の底では馬鹿にしていたんです」


 長門がゆっくり朝比奈さんの銃に触れようとする。朝比奈さんは天井へ向けて一発撃った。反射的に長門が後ろへ退いた。


「それにキョン君は、一番嫌いでした。あなたの目に、私は映っていなかった。それにわたしが困った時はいつも…いつも」


 朝比奈さんは震えながらゆっくり俺に照準を定めた。だがハルヒが、長門が、古泉が立ちふさがる。だが俺はゆっくりと三人の傍を離れた。


「朝比奈さん。あなたが本当に望むのなら俺を撃ってください」





 嫌です 



「嫌です…。嫌ですよ。どうしてこんなことになっちゃったんですか。どこで変になっちゃったんですか。わたしはみんなのことが…大好きだったのに」


 朝比奈さんはとうとう泣き出してしまった。



「やっぱりそうだったのね」


 誰かの声がして、その瞬間世界が揺れた。


 俺がもう一度頭を上げた時、俺の目には見慣れた天井しか映らなかった。

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