第38話
「みくるちゃん?」
「はいそうですよ。心配かけちゃってごめんなさい」
朝比奈さんはペコっとお辞儀をした。
「よかった…」
と言ってハルヒがペタンとしゃがんだまま手をつく。朝比奈さんは微笑んだまま左手で持っている銃をハルヒの頭に定めた。
パン
と同時に朝比奈さんとハルヒが逆方向に吹っ飛ばされる。古泉が朝比奈さんを、俺がハルヒを突き飛ばしたからだ。銃弾は明後日の方向へ飛んでいき、俺がほっとする間もなく古泉がこっちへ投げ飛ばされて来た。俺たち三人は部屋の奥の角、中央に森さん、ドアの前に朝比奈さんが陣取っていた。
「森さん、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。別に怒ってなんかいませんから。ずっと横になっているのもよかったけれど、わたしが出ていってもいいかなって思っていたんですから」
何で森さんが朝比奈さんを恐れてるんだ?
「あれ、キョン君まだ気がついてなかったんですかぁ?森さん=モリアーティーだと信じちゃいました?。わたしがモリアーティーです」
森さんはモランですよ、と続けた。そんな。
「ごめんなさい。キョン君はじっとしててね」
そう言って朝比奈さんは再びハルヒに照準を合わせた。
バンッ
「モリアーティー逮捕だ――!!!」
誰かがハルヒのように扉をぶち開き、朝比奈さんに背後から抱きついた。朝比奈さんが持っていた銃が、放物線を描き宙を舞う。だが最悪なことに銃をキャッチしたのは森さんだった。そのことに朝比奈さんを取り押さえている人物、鶴屋さんは全く気が付いていない。朝比奈さんがグルンと鶴屋さんごと背を向けた時、森さんが油断なく銃を構えた。
次の瞬間、森さんは床に組み伏せられていた。森さんを羽交い絞めにされていて微動だにできない。そのまま絞め上げられ続け、ついに森さんは悲鳴を上げて気を失った。
驚愕する俺らに向かって、当の本人は涼しい顔でこう言った。
「変装は得意。無論死んだふりも」
「長門!!!」
長門は森さんが持っていた銃を古泉に投げよこした。瞬間ドンという音がして、見ると鶴屋さんが壁に叩きつけられていた。目を回している。この朝比奈さん強すぎるだろ。
「はぁ、はぁ、やっぱり来ましたね。絶対来ると思ってました」
どういう意味ですか。朝比奈さんは銃を鶴屋さんに突き付けながらこっちを向いた。
「鶴屋警部は最初からわたしをモリアーティーだと疑っていました。そのうえでわたしを常に監視していました。一昨日の夜だってお茶が飲みたいってわたしの部屋へ入って来て。だから眠ってもらおうと睡眠薬を入れたお茶を渡したのに私が飲まされてしまいました」
それよりも、と長門を見た。
「やっぱり生きていたんですね。お腹に鉄板でも巻いているんですかぁ?」
「答える義務はない」
朝比奈さんはフフッと笑った。
「みくるちゃん。どうして、どうしてあたしを狙うの?」
「あなたのことが嫌いだからです」
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