第26話

「さて、何処から話したものか。まずは君が怒鳴りこんできた所から話すとしよう」


「君に喧嘩を売るとはどんな世間知らずかと思いきや、音沙汰のなかったルパンからだと聞いたときは実に驚いた」


「結局君は手紙を見せもせず持って帰ってしまったからその旨を鶴屋警部に頼んだのだよ」


「それから先は君たちも知っているだろうが、鶴屋警部が君たちと会ったわけだ。その後彼女は君たちをずっと尾行していた」


「鶴屋警部はルパンの狙いが金ではないことを知り、君の周りの人間がターゲットと睨んだ」


「君たちが事件を解決して帰ってきた後、朝比奈夫人が外へ出てきたため家に帰るように伝えたが断られたらしい」


「仕方がないので薬で眠らせ、服を拝借し囮とになったそうだ」


「その時点で私に援護するよう連絡が入ったため少し離れて彼女を尾行したのだ」


 今何て言った?薬で眠らせた?鶴屋さんが朝比奈さんを?何だよそれ。


「お怒りはごもっともだ。私とて驚いたのだが鶴屋君はやってしまったようでね。夫人には私からも謝ろうと思っている」


「みくるちゃんのことは分かったわ。さっさと続きを言いなさい」


 おいハルヒ、と睨みつけようとしたが、逆にハルヒに睨み返された。


「あんたもよく考えなさい!あたしもはらわたが煮えくり返っているけど問題はそこじゃないの!もしかしたらみくるちゃんが殺されてたかもしれないのよ!」


 それは…そうだ。手段は悪かったが、朝比奈さんは守られたってわけだ。ハルヒは新川さんに続きを促した。


「我々はルパンが誘拐をすると踏んでいた。鶴屋君も念のため防刃ベストを着ただけだったのだが思わぬやつが出てきおった」


「あろうことが切り裂きジャックが飛び出したのだ。奴は鶴屋警部を躊躇なく背後からナイフで突き刺した」


「振り返った鶴屋警部が奴を押し倒しマウントをとったまでは良かったのだが、何か液体のようなものを鶴屋警部の顔面にかけた。鶴屋君が目を押さえて倒れ、奴は逃走した」


「新川警部は何してたのよ。ただぼーっと突っ立ってたわけ?」


「無論そのようなことはない。殺すつもりはなかったので、脚を重点的に狙って発砲した。全弾命中したはずなのだが」


 新川さんは少し苦い顔をした。


「奴はそのまま走り去った。脚を撃たれているにもかかわらず、何事もないかのように」


 まるで人ならざるもののようにね、と新川さんはため息をつきながら言った。そのとき扉がガチャリと開いた。


「みんなごめんよ。もうちょっとで捕まえられると思ったんだけど」目を真っ赤にさせた鶴屋さんが入ってきて謝った。


「あたしじゃなくてみくるちゃんに謝ってよね。でもみくるちゃんを救ってくれたことにだけは感謝しているわ」


 俺からみるとハルヒは鶴屋さんにかなり腹を立てているように見えるがな。


「本当にごめんよ。今回はちょっちやりすぎた。でも貴重な手がかりも手に入ったよ」


 そう言うと鶴屋さんは背中に刺さっていたナイフと青っぽい毛溜を差し出した。ギザギザの切っ先のアーミーナイフとカツラ。朝倉涼子の武器と髪だった。

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