第13話

 結局俺が眠ったのは明け方近くだった。だが残酷なことにそれは丁度ハルヒの起床時間と被っちまったらしい。早々に叩き起こされることになった。ホント、勘弁してくれ。


「馬鹿ね、早寝早起きがこの灰色の頭脳には重要なのよ」


 灰色な脳みそしてんのはホームズじゃねぇ、ポアロだ。お前は頭ん中にちょうちょでも飼ってんのか、などと俺が悪態の一つでもつこうとすると、朝比奈さんと古泉がコーヒーとパンを持ってきてくれた。


「みくるちゃん、古泉君、おはよう!!!」


「おはようございます」


「おはようございます。キョン君もおはようございまぁす」


 あぁ、おはようございます朝比奈さん。 と古泉。


 ハルヒがみっくるちゃーんとアメフトのサックを彷彿とさせる抱きつきを見せる隙に古泉が俺のもとへ近寄ってきた。


「涼宮さん、元気になられたようですね」


 ああ、元気になったみたいだな。おかげで俺はこのざまだ。すると古泉はニヤッと笑い


「凄いクマですね。昨日はずいぶんと静かだったと思いましたが、そんなにお楽しみでしたか。別に気にしませんでしたのに」


 お前が何を言っているのかさっぱり分からん。俺は考え事をしていただけだ。さっき寝たと思ったらもう起こされた。すると古泉は阿呆のような顔をした。


「本当に何もなかったんですか?」


 当り前だ。逆に聞くが、お前は何があると期待してたんだ?


「えっ、あ、いや、その、何というか」


 狼狽する古泉なんて初めて見たぞ、今日は何かいいことがあるかもな。


「すみません、忘れてください」


 喫茶店で奢ってもらえれば忘れる気がするね。



「さあ!今日は忙しいくなるわ!!!朝ごはんを食べたら依頼をバンバン捌いていくわよ!!!」


「申し訳ありません。僕は用事であるのでこの後すぐ出かけます」


 厄介ごとを押し付けて逃げる気か古泉。


「職探しですよ。いつまでもこのままっていうわけにもいかないでしょう」


 まあたしかに一つのアパートに探偵、助手、メイド(本当は管理人)と執事がいるっていうのはおかしいか。


「そう、まあそういう訳じゃ仕方ないわね。頑張ってね、古泉君!」


 ありがとうございます、と一礼している古泉と満面の笑みのハルヒを見ながら、元のSOS団みたいだとふと思った。ただ、ここに一人欠けていることに誰も気がつかないことが、ひどく悲しかった。

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