第8話

 毎週不思議を探すという名目のもと集合場所には探すべき対象が三人もそろっており、加えて言えば探そうと意気込んでいる本人が一番の不思議パワーを持っているというのはどういった皮肉なんだろう。唯一の一般人である俺の気も分かってもらいたいところであ「突然何を言いだすのですかあなたは」


 俺が気分良く語り始めたのに何だ古泉。


「何ですその語り出しは。もったいぶらず早く本題に入ってください」


 この野郎…。普段延々例え話をするのはどこのどいつだ。まあいい、続けるぞ。



 いつも通り喫茶店で今日の予定が発表された。


『あたしたちが普段行かないところに行ってみましょう』


 というハルヒの一声により朝比奈さんと古泉、長門(つまり俺を除くSOS団)が行くところを決めたんだ。


「私はデパートで茶葉を買いたいです」


「却下」


「そうですね、隣町に変わったボードゲームを取り扱っている店が」


「却下!」


「図書館」


「却下!!!もう!みんなもっと面白そうなところへ行きましょうよ!!!」


「まあ待てよハルヒ。お前も言ってただろう、普段行かないところ行こうって。その三人の意見を尊重しようぜ」


 あと俺の意見も聞け。ということで公正なじゃんけんのもと、俺達五人は図書館で読書をするということに活動の大半を使ってその日は解散。




「で、翌朝にはこの有様だ」


「涼宮さんは何を読んでいたのですか」


 アイツは…あれ、何読んでたかな…。


「一番肝心な所じゃないですか。では、長門さんは?」


 長門は確か…んん?


「からかってます?」


 違う違う!何か靄みたいなのがかかってて思い出せない。俺たちのは覚えているのに。


「では僕は何を読んでいたのでしょう」


 お前は、囚人のなんたらとか言うゲーム理論?だかの本だった。


「どんな内容の本ですか」


 詳しくは知らん、勝負事で勝つにはなんたらかんたらって本らしい。お前が言うにはな。


「ではハド…失礼、朝比奈さんは」


 たしかコミックだった。そう、『黒執〇』だった。


「どんな内容の本ですか」


 19世紀のファン〇ムファイ〇家の話らしい。 え、このネタ続ける気か?


「それで今朝の問答ですか。ならあなたは何を読んでいたのでしょうか」


 …シャーロックホームズだった。いやなんか懐かしくってな!と俺は何も考えるなと言われたのにうっかりマシュマロを想像してしまった超常現象博士のような言い訳をしていたが「どんな内容の本ですか」という古泉の返しで伝わっていないことがわかり補足説明をした。


「簡単に言うと今のハルヒが主人公のミステリー小説だ。助手のワトソン、つまり俺だな、と協力しながら事件を解決する話だよ。仇敵はモリアーティー教授とその右腕のモラン大佐だったかな。どうした古泉、顔色悪いぞ?」


「いえ、なんでもありません。どうやらあなたが読んでいた本がこの状況を招いたようですね。長門さんや涼宮さんが何を読んでいたのかも気になりますが。おっと、帰って来られたようです」


 何か気になる顔で、古泉は急いで会話を終わらせた。

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