第5話
ズダーーーーン
俺の目覚めはハルヒ特製ピストルによるものだった。マジで心臓が止まるかと思った。 ん?昨日は何処で寝たかって?ベッドの上だ。誰と? 俺は埃まみれだったベッドを掃除してから寝たからまだ眠い。というかまだ真夜中の2時半じゃねえか!
「いつまで寝てるの!早くメモする準備をしなさい!」
何するつもりだ、こんな真夜中に。
「昨日の難事件を華麗に解決したあたしの活躍を世間に知らしめるのよ!そのためにあんたが記事を書いて新聞社に送るの!」
何で俺が、っていうかホームズは自分のことを世間に知らしめたがらなかったはずで…まあいいや。
その後ハルヒは俺が苦労して書き上げたものを字が汚いだの表現が古臭いだの散々罵倒した揚句破り捨てるという暴挙を何度か繰り返した。最初こそ渋々書いていたんだが、眠気が覚めてくるとともに何かイライラしてきてハルヒが何度目か分からない罵声を言った時とうとう俺はキレた。
「ふざけんな!!!そんなに俺の書く文が気に食わねえんなら自分で書けよ!!!」
「なによ、自分の文章の下手くそぶりを棚に上げて!上等よ、自分で書いてやろうじゃない!」
「すみません、痴話喧嘩なら余所でやってくれませんか」
痴話喧嘩じゃねえ[ない]と俺とハルヒが玄関を睨みつけると俺たちと同じくらい不機嫌な目をした古泉が玄関に立っていた。
「失礼いたしました。痴話喧嘩でも夫婦喧嘩でもかまいません。犬も食わないので。ただ僕の部屋へ銃声や怒鳴り声は遠慮していただきたいものです」
言うだけ言うと古泉はバタンと扉を閉め自室へと帰っていった。俺はといえば埃っぽい自分のベッドへ潜り込み羊を数える作業に集中していた。
それからしばらく羊皮紙にガリガリ羽ペンを擦りつける音とクシャッと紙を潰す音が聞こえていた。一時間くらいたったころだろうか、俺は羊を数えるのを諦めただ目を瞑っているとハルヒの声が聞こえた。
「キョン起きてる?」無視。
「3秒以内起きないとハチの巣にするわよ」拳銃のチャッと構える音がした。 ぐぅ、卑怯者め。だが俺にも意地というものがある。絶対に起きてやらん。それから少しの間。
「ごめん」
俺が起き上がろうとする直前、バタンと音がしてハルヒの気配がどこかへ消えた。部屋にハルヒはいなかった。少し不安になり始めたころ扉がゆっくり開く気配がしたため俺は急いで寝ているふりを再開すると、ギィと隣のベッドが軋む音と同時にzzzといびきが聞こえてきた。
そっと隣を見ると宇宙恐竜に倒された光の戦士のように眠るハルヒだった。俺は仕方なく(仕方なくだぞ)自分が使っていた掛け布団をハルヒに掛け、椅子に座りしばらくぼんやりしていた。机の上に乗っているセロテープとゴミ箱を見ながらニヤけている俺はやっぱり変な奴なんだろうな。
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