第4話

 事件のあらましは省略だ。実際の事件とかなり変わっていたからな。言うまでもないが、ハルヒは人が死ぬような結末を望んじゃいない。だから原作では死んだはずの執事がぴんぴん生きていて、俺達と共にベイカー街に来ている。何でかって?ま、ゲームの相手がほしかったからと言っておこう。


 マスグレーブ家で助け出されたのは微笑みの超能力者こと古泉一樹だった。少しやつれていたが相変わらず元気そうだ。だが問題がないわけではなく、本人いわく記憶喪失らしい。だが、「涼宮ハルヒのことを覚えているか?」と聞いたら意味深にニヤけやがったからいくらか覚えているんだろう。 そういうわけでベイカー街へ連れてきたわけだが、ここへ連れてくることに対してハルヒが異常なほど渋った。


「あたしはどんなに立派に見える奴でも100%は信用しないのよ!どこの誰だか知らない奴をホイホイ信用するとあとで絶対しっぺ返しを喰らうんだから」


 いくら記憶がないにしてもそりゃあんまりだろ。古泉だって好きでこうなった訳じゃないだろうってのに。


「ふ~ん、この人コイズミっていうの。何、あんたの知り合い?」知り合いと言えばまあ知り合いだな。


「まぁあんたがそこまで言うなら別にいいわ。その代わり、部屋は別だからね」


 ああ、それで構わん。


「はぁ、めんどくさいわね。みくるちゃん!もう一つ部屋借りるわよ!隣の空き部屋!」


 !!!???おいっ!!!今何て言った!!!


「何よ。管理人を名前で呼んだだけじゃない」


 管理人?そう言えばホームズの住居は女の人から借りているんだっけ。


 パタパタ


「涼宮さん何か呼びましたぁ~」


 はーいと返事をしてから可愛らしい洋服姿の朝比奈さんが現れた。


「あぁ、朝比奈さん。こんな近くにいたんですね」


「あれ?キョン君どうして私のあだ名を知っているんですかぁ?」


「みくるちゃんのあだ名って何?」


 ハルヒは興味深そうに目を輝かせた。


「私の旧姓はミクル・A・サヒーナだったんです。だから昔はアサヒナって呼ばれてたんですよ。結婚してハドソンになってみくるはMだけ表記するようになったんです」


「へ~みくるちゃんの旧姓ね~。こいずみ君の名前も知ってたしあんた意外と顔広いのね」


 そういうことにしといてくれ。というより俺は朝比奈さんが既婚という設定にかなり打ちのめされているんだ。なんて設定しやがる!まあともかく朝比奈さんに古泉の事情を説明し、了承を得た。


「よろしくお願いしますね」


「こちらこそどうぞよろしく」


 両者とも微笑みがこれ以上ないぐらい似合っている。後は長門だけか。と、その前に。


「朝比奈さん、ハルヒについて何か覚えていますか?」


「どうしたんですかぁ?もうだいぶ長い付き合いですよ。警察の方も来られるほどの名探偵じゃないですか」


 だめだ、何も覚えていないみたいだ。まあとにかく、今日はこれぐらいで終わりだ。できれば長門とも再会したかったんだがきっと明日にでも会えるさ。今日はもう寝よう。だが俺の考えが甘かったと分かるのに朝までかからなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る