episode1 #4「河原の怪物」

 二手に分かれた炎美は真っ先にとある場所へ向かって行った。


 (確かターゲットはコッチに行ったよな)


 スマホを取り出すと何かを見ていた。


 ---実はあの時横を通った時、密かに発信機を男に付けていた。


 何故付けたのかは分からない。無意識の内に付けていた。


 ひょっとするとこういう状況に慣れていたのかもしれない。ますます自分のことが分からなくなってきた。


 取り敢えず発信機をつけた男の場所を確認すると1km離れた河原の方で動きが止まっていた。


 「よし、そこに行ってみるか」


 ---一方の柑菜は手当たり次第に捜し回っていた。


 「ったく、ドコよ、あいつ~」


 イライラしながら捜索をする柑菜。


 「それにしても色々と変なヤツ、黒崎 炎美。一体何者なの」


 柑菜は炎美に対して違和感を感じていた。


 「何か私達と同じ匂いがした。同じ力を持つ者の匂い。一体、あいつ何者なの?」


 柑菜はそんな疑問を抱えながら捜索を続けた。


 ---それから10分後、炎美は目的の河原まで来ていた。河原の近くには人影は1つも見当たらない。


 だがそこには1つだけ大きな緑茶色の物体が見えた。


 炎美は柑菜に連絡する為スマホを取り出した。


 『ガチャ!もしもし!柑菜さん、今目標を確認しました』


 『もしもし!今ドコ?直ぐに向かうわ!』


 柑菜は場所を聞こうとしたが炎美はこう言った。


 『今は河原の方にいます。でも大丈夫です!俺が何とかしてみます』


 『ちょっ、あんた何言って…プツッ!』


 炎美は柑菜の話を最後まで聞かず電話を切った。そして何事も無い様に大きな物体に向かって行った。


 すると大きな物体がゴソゴソ動いていた。そしてくるりと炎美の方に振り向いた。


 その物体には鋭い目に鋭い牙、夥(おびただ)しい程の鱗を纏(まと)っていた怪物だった。


 「あーん!何だテメエ!!」


 怪物は威嚇(いかく)する様に炎美を睨みつけた。


 「やあ、さっきぶりですね」


 だが炎美は臆することなく小さく手を挙げ挨拶をした。


 「ああ、さっきぶり~?」


 怪物は眉間にシワを寄せて思い出そうとした。


 「…ああ、公園の方でボケっとしてた兄ちゃんか!つうか、よく俺の事が分かったなあ」


 怪物の正体は何と捜していた男だったのだ。


 「どうした?何か俺に用か?」


 すると炎美は男を指差しこう言った。


 「悪いけど、あなたを捕まえさせて貰います」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る