チャプター3:新しい標的
フェイクはあのあとすぐに来た警官達にことの顛末をすべて話した。3人家族を脅迫し強盗しようとした3人のチンピラのことを。たまたま近くを通りがかっていたところを見つかり、追われたこと。そしてピンク一色のヒーローに助けられたことを。
もちろん警官は最後のピンク以外信じてくれて、最後のピンクだけ信じてはくれなかった。
フェイクは呆気にとられ撮影を忘れていたため、証拠となる映像もなかった。結局警察署まで連行される形となり、そこで事情聴取ということになった。しかし別の部屋で事情聴取していた不良達の証言と、被害者の家族の話でフェイクは厳重注意だけで済み、そこまで長く拘束されずにすぐに解放されたが・・・また知り合いのジェンキンス警部補に心配を掛けてしまったことに、フェイクは溜息を吐いた。
バード・ジェンキンス警部。フェイクが動画活動を始めて2年くらいになるが、始めたてはよく失敗し街の悪党共によく追いかけ回されていた。その時からよくお世話になっているのが彼である。
フェイクはまた親に連絡がいくことを知り、もう一度また溜息を吐いた。また説教をされてしまう。
そんなことを考えていると、いつの間にかフェイクは自分の家の前にいた。住宅街にある2階建ての一軒家で、広さは母と二人過ごすくらいなら充分なほどだろう。
玄関からはまずい。フェイクはそそくさと家の横にある庭に回り、家と同じくらいの大きさまで伸びている木によじ登る。そこから2階にある自分の部屋の窓に続く枝を渡り、少しだけ空いている窓に手を掛ける。
ゆっくりと静かに、音を立てないように窓を開ける。自分が入れるくらいまで開けて、フェイクは床に響かないように忍び足で中に入り込んだ。
よし、とフェイクが小声で呟くと同時だった。部屋の電気がつき、明るくなった。
「随分遅いお帰りね、フェイク」
部屋の扉の前で、電気のスイッチに手を伸ばしていた中年の女性がいた。
女性・・・フェイクの母親である、ミリア・フィッシャーである。
「・・・バイトで遅くなったんだ。今日、店の戸締まりまでしないといけなくてさ」
「バイトはやめたって聞いたわよ?」
フェイクの返事にそう答え、ミリアは深く溜息を吐いた。
「フェイク、ジェンキンス警部から連絡がきたの。あなたが不良に襲われているって」
「たしかにちょっとドジ踏んじゃったけど、怪我とかしてないし、こうしてしっかり帰ってこれてる。だから大丈夫」
「そういうことじゃないの、フェイク。もうこんなことはやめてって言いたいの」
心配するようにそう言いながらフェイクに近づき、そっと抱きしめた。
「わざわざ自分を危険に晒すような、危ないところに行って撮影なんてしないで。撮影ならもっと学校のこととか、もっと他の安全な動画活動をして」
ぎゅっと、抱きしめる腕の力が強くなる。フェイクはそんな母の心配に胸が締め付けられる思いになった。しかしカメラを手放さすことはせず、そっと抱きしめられていた母の腕を自ら解いた。
「わかったよ、動画活動自体はやめるつもりはないけど・・・もっと他の、安全なものを何か考えるよ」
「本当に?」とミリアはまだ少し心配の色が見える瞳でじっと、フェイクの目を見つめた。フェイクはそれに対し心配させまいと微笑みながら「まだなにかわからないけど」と返した。
「お願いよ、フェイク。こんな街だから、とても心配しているのよ?」
「大丈夫・・・今度はもっとうまくやる。だから、そんなに心配しないでくれ。もう夜も遅いし、母さんも明日は朝早いだろう?」
「ええ、それもそうね」とミリアは部屋から出ようとして、ふと思い出しだしたように振り返り、「おやすみなさい、フェイク。愛してるわ」と告げた。
フェイクも「うん、おやすみ。愛している」と答え、部屋から出て行く母を見送ってから、フェイクはそのままベッドには向かわず、机に座りパソコンを立ち上げる。
少しだけ調べものをしてから寝よう。フェイクはネット開き、検索をかける。検索ワードは今日出会った謎のヒーロー・・・ピンクシール。
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