第4話
そんな調子に引っ張られ、会場へとやってきた二人。
河川敷に向かうまでの道には露天が賑わい、多くの人がごった返していた。
楓は前を歩く結斗の上着の裾をはしっと掴み、ついてくる。
結斗達が河川敷に着くやいなや、大きな花火が空高く打ち上がり、辺りを鮮やかに色に染める。
「わぁっ。綺麗……。」
空を見上げる楓。その横顔に思わず見惚れてしまう結斗。
色とりどりの花火が打ち上がる中、二人は土手の空いたスペースを見つけ、腰掛ける。
「空いてる所があって良かったね。おー、すごいすごい。綺麗だなー……。」
結斗が楓に話しかけると前に座っていた浴衣姿の女性がぴくりと身体を揺らす。
その様子を脇目で確認すると、楓は結斗に話しかけていく。
「ホント、綺麗ですね……。あの、結斗さん。私じゃ、ダメですか……?」
「え、えっ? な、なんの事……?」
「私、結斗さんの事、好きになっちゃいました。」
楓は隣に座る結斗の腕に手をかけ、結斗の事を見つめる。真っ直ぐな言葉、視線。
結斗はその楓の手をゆっくりと掴み、楓の身体へと押し戻す。
「ごめん。気持ちは嬉しいけど、俺には好きな人が……。」
「芽衣子さん、ですよね。なんとなくわかります。……ダメですか? 私、そっくりなんですよね? 芽衣子さんの代わりだって良いです。その内、斉藤楓の事をホントに好きにさせてみせますから。」
「楓さん……。ありがとう。でもダメなんだ。」
結斗はすっと瞼を閉じると、しばらく考え込む。
そしてゆっくりと瞼を開くと、楓の事を見つめる。
「確かに君と居るとドキドキする。でも違うんだ。俺が想っているのは、白藤芽衣子、ただ一人なんだ。好かれているとか、好かれていないとか関係ない。」
そう言いながら、結斗はにっこりとした笑顔を浮かべる。
「男が一度愛すると決めた女なんだ。そうコロコロ変えられるものじゃないさ。だから、ごめんね。」
結斗がそう告げると、夜の河川敷には一際大きな花火が花開いた。
「はぁぁぁ~……。撤退ですか……、帰ったら減給かなぁ……。」
宇宙船の中では女性の異星人が荷物の整理をしている。
「地球人の思いが、あそこまで頑固だとは思わなかったな。」
「だから、私は有機アンドロイドに恋させて異星人のDNAを持つ人間を繁殖させる作戦なんてまだるっこしいと思ってたんですよ……。」
「我ながら良い作戦だと思ったんだがなぁ。ちなみにあれからあの二人はどうなったんだ?」
男性の異星人は浴衣を着て涼しげに団扇を扇いでいる。
「あの二人ですか? 相変わらずですよ。」
女性異星人が呆れたような表情を浮かべ、観測モニターを切り替える。
「ま、椿結斗と白藤芽衣子が一緒に過ごす時間が少し増えたみたいですけど、ね。」
観測モニターにはいつもと変わらない様子の二人の姿が映し出されていた。
地球侵略計画。 @yasu13
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