第2話

「最近モテモテねぇ。どの子にするのよ~。」

芽衣子は頬付けをつきながら、向かいに座っている結斗に向かってにやにやと意地悪な笑みを浮かべている。

結斗のスマホは先程からひっきりなしに通知のバイブで震えている。

さすがにうんざりしたのか、これ以上芽衣子に言及されないようにしたいのか、バイブからサイレントに設定を変えるとスマホをカバンの中にしまい込む。

「そんな事言うなよ……、それに急によく知らない女の子に好きなんて言われてもどうしたらいいのかわからないし。」

「あら、よく知らないからもっと一緒に居て、相手の事知りたいって思うんじゃない? とりあえず付き合ってみちゃえばいいのよー。」

「他人事だと思って……、最近なんか、……いやいい。」

「何よ、気になるじゃない。」

「いや……、男にまで……、告白されたんだよね……。」

「あはは!! まさか、そんな気があったの?」

俯きながら呟く結斗の言葉にけらけらと笑い飛ばす芽衣子。

二人がこのファミレスに入って早数時間。

夕方前の店内は人もまばらで、芽衣子の控えめな笑い声でもよく響く。

芽衣子はコーヒーを一口含むと、優しくカップを置き、指を折りながら結斗に確認するように話す。

「えーっと、年上の美人教師に、同い年のお嬢様。年下の病弱な子に…、活発&大人しげな双子ちゃんからも迫られてるんだっけ? それに男と…、なんかギャルゲーの主人公みたいねぇ。」

「俺が主人公なら真っ先に芽衣子を攻略するんだけどなぁ。」

「ざんねーん。私は攻略不可キャラクターでーす。」

そんな会話をしている結斗と芽衣子を遠くから眺める二人の影。

「あいつか……。あんな会話、もう告白して振られているような物じゃないか……。」

「まさしくそうですね。我々が作戦を開始し、対象を観測し始めてから椿結斗は白藤芽衣子に真面目な告白を1回。あのような軽い物を含めると数知れずの告白をし、そしてあっさりと振られています。」

「そんな状況で我々の有機アンドロイドの誘惑を振り切っているのか。ふむ……。それならば、白藤芽衣子のデータを採取しよう。」

「クローンを作製するんですね。あ、丁度良く店を出そうですよ。」

結斗と芽衣子は荷物をまとめ、席を立つ。

「さ、じゃあそろそろ時間だから行くね。今日は最近ナンパされたイケメンとデートなのよー♪」

「まったく……、何でそういうのをわざわざ俺に言うかね。」

「傷ついた? ごめんねー、でもこうした方が、次の人に行きやすいでしょ?」

「へいへい、お気遣いどーも。……気をつけて行ってくるんだぞ?」

「あはは、お父さんみたいな事言ってるー。大丈夫よ、ありがとね!」

会計を済ませた二人がそれぞれ財布をカバンにしまい、店の前で別れる。

異星人達は急いで二人が座っていた座席に向かうと芽衣子が使っていたカップから生体データを採取した。

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