第10話
「モモ…カ?」
そこにいたのは紛れもないモモカだった。彼女はニコリと笑い、「私以外に誰なのよ」と言った。
僕はゆっくり近づいた。そして、確かめるように彼女の頬を触り、自分の頬を何かが伝った。そのまま僕は腰が抜けたように地面にへたり込んだ。
「よかった…幻じゃ、なかった…」
自分が見た物が信じることが出来ないのが、本当に辛かった。胸が苦しくて、どうにかなってしまいそうだった。それでも、会いたくて彼女を探し続けた。諦めなくて、良かった。僕は、本来の目的を思い出し、もう一度立って彼女の目をまっすぐ見た。
「約束破ってごめんなさい。僕、他に友達が出来て浮かれていたんだ。一番に友達になってくれたのはモモカなのに、本当に、ごめんなさい。」
溢れてくる思いを言葉にするのが難しくて、何を言っているのか、自分でも分からなかった。ただ、彼女に謝らなきゃ、その気持ちで頭がいっぱいになっていた。彼女は、優しく微笑んだまま答えた。
「大丈夫だよ。私、全然怒ってないもん。確かに、ちょっと寂しかったけど、ケイくんにお友達が出来て嬉しかったよ。」
一体どこまで優しいのだろう。悪いことをしたのは僕なのに、何で彼女は僕を責めないのだろう。そう思うと目から溢れたものが止まらなかった。
「それにね、もう私、ケイくんとは会えないんだ。」
一瞬、呼吸が止まった。
子供の遊び声が遠くに聞こえたような気がした。呑気にそんなことを考えていた僕は、声が出なかった。
「な、なん…で…」
やっと絞り出した声は何とも頼りない声だったのだろう。泣きそうになる気持ちを堪えて言えたのがこの一言だった。
彼女は唖然としている僕に悲しそうな笑顔で答えた。
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