第9話
僕はあれから必死に探した。
友達にも聞いた。でも、全員知らないと言われ、最終的には「こんな夏に桜が咲いてるわけねーだろー!」と馬鹿にされて終わった。図書館にも行った。この街の歴史や神話の本を開館から閉館まで居座って読み続けた。
それでも、何も出て来なかった。彼女も、ずっと姿を現してくれなかった。
話すのを躊躇ったのだが、おじいちゃんとおばあちゃんにも聞いた。しかし、何も知らなかった。
東京へ帰る前日。その日も同じように僕は探していた。図書館では全ての本は読んだから、朝早くから家を出ていつもの小さな丘に向かい、そこでずっと待っていた。僕は、そこで待つことしか出来なかった。
今日も変わらず蒸し暑いので、大きな木の下で一人で待っていた。遠くに見える建物が小さく見えた。川の近くで僕と同い年くらいの男の子たちが遊んでいるのも見える。
もう、彼女に会うことが出来ないのか。
僕の勝手な行動で、大切な友達がいなくなってしまうなんて、思わなかった。もうどうしようも出来ない。僕は一人で呟いた。
「もう、諦めるしかないのかな…」
「何を諦めるの?」
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
振り返ると、そこにはモモカがいた。
彼女は笑ってそこに立っていた。
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