第3話

「さて、ケイ。今日は疲れただろう。もう休まんかね?」

そう聞いて来たおじいちゃんは、僕の荷物を一ヶ月間僕の部屋となる場所へ持って行った。僕はおじいちゃんに付いていき、自分の部屋に来たのだが、これからどうしようか全く考えていなかった。遊びに行こうにも、地元の子たちに話しかける勇気なんて全くない。困っていると、隣の部屋から割烹着を着たおばあちゃんが現れた。

「あら、ケイくんやないの〜!元気にしとったか〜?」

元気よく聞いて来たおばあちゃんは嬉しそうにニコニコしていた。一年振りに見るおばあちゃんは全く変わっていない。

「うん、元気だよ!おばあちゃんも元気だね!」

そう僕が言うと、「そうかね、そうかね〜」と微笑んでいた。いつでも歓迎してくれるおばあちゃんは、料理が上手で、毎年美味しい料理を振る舞ってくれる。

「一ヶ月も一緒にいれるなんて嬉しいわ〜!ゆっくりしてってね〜!」

そう言い残して、隣の部屋に戻って行った。おじいちゃんは、「全く、あいつは…」とブツブツ言っていたが、僕は知らないふりをした。

「おじいちゃん、僕、ちょっと散歩したい!」

おじいちゃんにそう言うと、ブツブツ言っていたのを止めて笑顔で「そうかそうか!行って来い!」と言った。

そうと決まれば、僕は持って来たつば付きの帽子を被り、玄関へと走った。

「あら、ケイくん何処に行くんや〜?」

台所から顔を出して来たおばあちゃんに向かって、「散歩してくる!」と叫んだ。そして、「暗くなる前に帰ってこやーよー」とおばあちゃんは言った。

「はーい!」

と、僕は返事をして開けっ放しになっていた玄関を飛び出して行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る