3話 職場

コンビニの窓の外からは出勤途中サラリーマンが見えている。

コンビニから少し歩くと、小さなビルの一角にあるのが、俺の職場だ。IT企業とは言え、そこまでは大きくはない。

職場では朝からパソコンのキーボードを打っている音や、社員の声が聞こえる。

「名川部長。おはようございます。」

そう声をかけたのは、俺の部下である島村だった。元気で落ち着きがない社員だが、職場のムードメーカー的な存在だ。

夢に関することを行なっているIT企業とは言え、俺が働いているところは、メインの事業とは違い、広報やお客様の苦情などを受け付ける部署。通称

「広報課・お客様窓口課」

社内では、こう呼ばれている。

直接的に商品開発や、取引などを行う部署とは大違いだ。その割に、残業が多い部署だ。朝から、先日新発売した商品の苦情電話が何本もかかっていた。

「部長大変ですよ…。先日新発売した、ゆめゆめワールドの苦情電話が…。」

「島村、苦情はどれくらい来てるんだ。」

「50件ほどは…。」

「上は何て言ってるんだ。」

「配信停止は仕方ないと。」

「そうか。」

すると、部下の山石が。1本の電話にあきれていた。

「お客様。そちらに関しましては、こちらの問題では無いかと思うのですが…。」

そんな山石に聞いた。

「山石。何て苦情なんだ。」

「あ、部長。このお客様、ゆめゆめワールドを家の外でやってたら、家がオートロックらしくて、鍵が無くて、家に入れなくなった。って言う苦情電話なんですよ。」

ため息をつきながら、山石は言った。

「それは、何て苦情電話だ。」

と、俺は笑いながら言った。

「ですよね。部長。」

こんな苦情電話の対応などをしている。

苦情電話の詳細をデータとして残し、上とその問題を報告する。

苦情電話を受け取ると、気づかないうちにお昼ってこともある。電話の件数に対しての社員の数も少ない。安い賃金で働いてる割にこの仕事はかなりブラック企業だ。職場に寝泊まりをして仕事をすることも当たり前みたいになっている。とても大変な仕事ということもあり、辞めたいというのもあったが、辞められ理由がこの職場にはあった。

「親友」

この会社は俺が、高校生の時に親友であったやつの会社だった。大人にもなっても仲が良く、俺が、前の仕事を辞めた際、声をかけてくれた。その言葉に乗ってしまい、この職場に入ってしまった。部長という立場はあるが、まだ職場環境はいいとは言えなかった。他に仕事があるわけでは無く、この会社を辞めるわけにいかない俺は、親友でも、職場環境について伝えることが出来ていない。


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