第20話 セックスロボット

ただ、理解しあえる人が独りいるだけでよかったのに


神聖なるイニシエートというカーストのバラモン。


彼らだけが真の恋愛を知る。


彼女は愛の吐息を吐いた。


死の舞踏。


彼女は狼の足取りで近づいてくる。


濡れた秘所 愛液の涙。


僕たちの恋は、悲劇的でドラマチックで、まるで帝王や魔術師の仮面のようだったね。


愛ははかない。断じてはかない。


永遠の愛。


それは刹那の愛のことだ。


その短い瞬間のためになら自分の全てを捧げてもいいと思える、


そんな思いを愛と呼ぶ。


ああ、ああい、ache 、headache


悩みの重なる頭痛の冬。


創造主なるブラフマー神に私は達した。


この世の創造の微細な神秘を解き明かす。


目的を啓示し、展開する意志。


あの「知」はあらゆる思考を超えている。


けっ、チンポ騎士め!


嗚呼!暗黒の母よ。


全てを食らう時の女神よ!


懊悩よ!


観念のバリアーを取り去って苦しみを感じつくす。


それが苦しみを消す。


黄昏が似合う、夕暮れ時に、足を組んで、リラックスした彼女。


恋人たちに技法はいらない。


愛の技法は、そのときそのときに臨機応変に生み出されたものばかり。


そうしてできた聖典は、笑うに値する。


そして涙に値する。


あるジャック・ラカンの解釈者が、創造主ブラフマーの神秘に達し、恐るべきカーリー女神をまぶたの中に具現化してしまった。


女-母なんてのは、交尾のあと雄を貪り喰っちまうカマキリみたいなもんだよ(Lacan, Le seminaire, livre X: L' angoisse[1962-63])


イザヤ書33章14節 「焼き尽くす火なる神」


観念のジャッカルが追ってくる。


断じて啓示の正午の明るさを保たねばならぬ。


足がすくむ。


全宇宙でたった一人大地を踏みしめてるんだ。


宇宙の中の一点である地球。


闇、闇、暗闇、救いのない闇のなかで、


全てをあきらめたとき、こんなに近く、しかし決してとどかない、あの女。


あきらめ、あきらめれない。


圧倒的な闇、それは光であった。


観念の夢から抜け出て見た、厳しい闇の世界、それこそが光の世界であった。


果てしない悲しみの中で悲しみは消え、


美しき安らぎがあった。


昔より、苦しくなくなったね。苦しみを一生懸命、生きることこそが苦しみの終わりであり悟りだったのだ。


心の正直さを前世で踏破した。


誠実さ、てらいのなさを、青年時代に踏破した。


最後の無執着の境地が目の前に見える。


至高なる無関心。


愛だけを、真実だけをみつづけること。


それ以外を見ないこと。


赦し。 


地平線を降りてゆく真っ赤な夕日の香りは、こよなく典雅であった。


大地も海も宇宙も広大であった。

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