第18話 大海の王者

私が消えたとき、ただ大海原の如く覚醒した全体があった。


私だけが覚醒しているのではなく、虫けら一匹、木の葉一枚、森羅万象が覚醒しているのであった。


それらはただ知っているのであった。


信仰とは、どんなことも貫けるような意志の力であり、


金貨を目の前にした泥棒の渇きに似ている。


春ってのは苦手な季節だ。


俺を苦しめた女たちが頭の中でざわめき始めた。


しかし、私はすでに、負の記憶にあまり右往左往しないほどに、「我」が落ちているのだった。


ここまで来るのは容易ではなかった。


SMのAVが好きだ。


見ていると、我が落ちていく。


偶然の暴力によって我が落ちる。


方法などない。


この世界は漆黒の闇だ。


この世界が光だと思うなら、あなたはまだ圧倒的暴力を知らないのだ。


頭で生きてるのだ。金玉と根性で生きてないのだ。


頭を落としなさい。


真の安らぎは、頭の分別意識を超えたものだから。


切迫した透明な闇。


故郷が見えてきた。


om mani padme hum


蓮華の中のダイアモンド。


廊下でシヴァ神のマントラとなえていたら,また我という滴が溶け出して、脳内に安らぎをもたらすセロトニンが分泌されてるのがわかった。


溶けていく。 


僕が思うことは君も思うんだね。


夕日がいつもより照り輝いて地平線を赤く照らし出していた。

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