第11話 月と僕たちの濡れた心

明日を暗示する夕日だ。


未来を透視する鷹の目。


行くなよ。行かないでくれよ。


昔、命がけで生きてたころ、大学を退学した私に親友が叫んだことを彼女に叫ぶ。


戻って来いよ。


私は、解脱した後戻ってきた。


それは、みんなを教え導きたい。観念を超えて真実を知りたいと思ったからだ。


私たちが過ごした真実の愛の時間は、時空を越えて記念碑的に結晶化された。


クリシュナ神と、女たちの遊戯のように。


涙に濡れた瞳は、いかなる論理よりも雄弁なのでした。


情念それは、魂への通り道。


あのひそやかな欲動のささやき。


あの女が俺に幻を書かせようとしている。


闇の幻影が私の心を苦しめる!


吹きすさぶ風のように。


ああ、私が愛したあの女は、今は無数の男に抱かれて精液に浸されて、


私を裏切っているのだろうか。それとも、彼女は単に女であっただけなのか。


下町の女が、あるニートの男を好きになった。


紐になった彼に、就労支援に与えた2万円は、キャバクラに使われてしまった。


それでも、そんなこと関係なく彼を愛する女の瞳は、女としての輝きに溢れていた。


彼女の瞳が、金持ちや金持ちの情婦よりも輝いてたとしても不思議じゃない。


舞台は、ヴェルサイユでも、パリでもなく、罪深い狭い路地の奥にある地味な家の中だとしても。


銀の音楽。


照りわたる月の光は、どこまでも切なく心を切り裂く魔法の音楽。


二元性が消え、ここに安らぎがある。


陶酔の悲しみが消える。


ああ!

 

魂の憧れ。


ハートのリフレイン。


あのときの愛の記憶を反復する、時空の海を横切る精神の船。


彼女の胸のサファイヤは、永遠の愛のしるし。


これで永遠の中に永遠にい続けるんだね。


それって今この一瞬にあなたが瞬いたその刹那ってことなんだね。


一念に久遠を垣間見た。


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