リュウと障害物

「さて、もうちょい練習するか!」


気合を入れて、ホウキにまたがる

目を閉じ、ゆっくり飛ぶイメージをすると、先ほどと同じように地面から浮きあがる

次に、前に進むイメージをすると、前に進み始めた


「おぉ~~~!!進んだ!」

「それくらいで感動してどうするの?」

「!?!」


感動しているユウの前にリュウが現れ一言言った


「それくらいじゃないよ!僕にとっては一大事だよ!」

「これくらいが一大事じゃ、障害物避けるのなんて世界の大事件じゃん

 初めてなのは分かるけどさ、障害物避けるくらいは出来ないと自分が困るよ

 今の時間中に出来るのが望ましいね」

「ぅ…わ、分かったよ…

 でも、どうしたら…」

「焦らなくて良い、ゆっくりでも良いからホウキをコントロールして避ける」

「う、うん…」

「口で説明するより、やった方が早い

 障害物はコッチ」


リュウは、障害物があるところまで、ユウを案内する

そこまでは何もなく、ユウもゆっくりついて行くことができた


(あれ?僕のペースに合わせて、ゆっくり案内してくれてる?)


ライナ並に上手いから、ライナと同じスノーボードに乗ってると思われるリュウ

そのリュウが自分のペースで進めば、ユウは確実に置いて行かれる

まぁ、案内なのでユウを置いて行ったら元も子も無いが…


(意外と優しいんだ~)


言葉に棘があったり、少し冷たいところがあるが、根は優しいようだ


「ココだよ、とりあえず、1回やってみなよ」

「わかった…」


ユウは、ゆっくりと障害物を避ける

ぶつからない様に…と意識したせいか、かなり大回りになってしまった


「な、何とか避けれた…」

「かなり大回りだけどね

 慣れたら、何てことない障害物だよ」

「そうだろうけど…今は、一つ避けるのも大変だよ…」

「慣れるしかないね」

「だよねぇ…」


今日1日で同じような事を何度も言われている気がする…というか、言われている

どうやら、本当に『慣れる』しかないようだ

ユウは軽いため息を一つついて、ひとまず降りることにした


(はぁ~、疲れたなぁ~)


疲れと、もう降りるだけ…と、少し気が抜けたユウ

何もかもに慣れてないユウには、少し気を抜いただけで…


グラッ


「!!?」

「馬鹿っ!!」


パシッ


「ッ!?」

「ったく…気を抜くからだ

 慣れてないんだから、気を抜くなら降りてからにしなよね」


空中でバランスを崩し、落ちかけたユウの腕を間一髪リュウが掴んだ

そのおかげで、ユウは落下することなく、宙に浮いている

ユウを間一髪助けたリュウは逆さまになっているのに、スノーボードにしっかり足がついている

逆さまになっているのに、特に慌てる様子も無くユウに注意する


「あ、ありがとう」

「別に…」


ユウは素直にお礼を言い、リュウはプイッとそっぽを向いた

リュウはスノーボードを下に移動させユウを乗せる


「はぁ~、驚いた~~」

「それは俺のセリフ

 ホウキから落ちるなんて、幼児のする失敗だよ」

「仕方ないじゃん、僕は初めてなんだよ!」

「分かった分かった、とりあえず下に降りるよ」


リュウはスーッと高度を下げて、地面に到着した


「初めてなんだから、油断したらあぁなる

 気を付けなよ」

「ぅッ…分かった…」

「じゃ、俺は俺の練習するから」


リュウはそう言うとスノーボードで飛び去った


(…自分の練習時間割いて、僕の練習見てくれたのかな?)


ふと、リュウの言葉に引っかかったユウだが、確認するにも本人がいない

ユウは疲れたので校舎にホウキを立て掛け、休憩を始めた

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