赤ずきんの恋

「どうしてキミは」


 そう呟いたアナタの瞳が沈む。

「君は、ただの肉の塊で居てくれれば良かったんだ。君は、ただ僕を怖かってくれれば良かったんだ」

 そう言ったアナタが、少し大きな手で顔を覆う。

「ごめんね」

 そんな言葉しか返せない私の喉元に、アナタの唇が当たる。

「白い肌の柔らかさも、赤い唇の持つ声も、君の甘さも、知らなければ」

 喉元に当たる歯は、肉を刺さず静かに肩へと顔を埋める。肩越しに伝わるのは、荒い息と細かな震え。

「私は、アナタがいいの」

「僕は赤が嫌いになりそうだ」

「けれど、赤は私だもの」

 するりと落ちるは、赤い頭巾。

「アナタは私を、食べるしかないの」

「ああ、どうしてキミは」


 それは、実ることのない恋でした。




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