天の邪鬼な私

通りの喧騒から抜けだし、地下に伸びる階段を降りれば、レトロな雰囲気を醸し出すとある店よすぐ横には小さな立て看板が開場と開場時間を知らせている。

時計を確認するが、良かった、まだ少し時間がある。

はやる気持ちを抑えつつ、ほの暗い店内へと足を踏み入れれば、ステージ上で仕度をしていた彼が「来てくれたんですね」嬉しそうな表情を浮かべて私に話しかける。

「……時間に都合がついたので」

本当は彼に会いたくて仕事を早く終わらせてきたというのに、口をついて出た言葉は想いとは裏腹な言葉だ。

「じゃあ、楽しみにしてくれてたってことですね」

ふふ、と私の言った言葉の意味を汲み取った彼ははにかむように小さく笑った。



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