300文字の恋の話

渚乃雫

しりとり

「しりとりしよ」


前触れ無く君が言う。

「よし、わかった」

頷いた僕に君はニコリと笑顔を浮かべて口を開く。

「たい焼き食べたのは君か?」

「あ、ごめん」

「あ、じゃない。たい焼き返せ。あと最後は、か」

どうやらしりとりは始まっていたらしい。

「んー、ガンプラ」

そう答えた僕に君の眉間に皺がよる。

「何でそうなの」

「濁点くらい良しとしようよ」

口を尖らせる君に、笑えば不満そうな表情だけが返ってくる。

「来週は私の誕生日なんだけど」

カレンダーも君の視線も無視。

「ドレミの歌」

むすっとした表情も見て見ぬフリをする。

「竹」

不貞腐れたような顔をして短く君は答える。

その表情が変わるのは、あと数秒後。



「結婚しませんか?」




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