3日目、そして気づき
私がここにきてからもう3回目の朝だ。ゆっくり眠っていたって咎める人は誰もいない。私のことを影からお世話している人がいるのは確かだが。シャワーを浴びるときに脱いだ服が脱衣カゴからなくなっていると思えば、今朝は綺麗に折りたたまれてタンスの前に置かれているのだから。
今日、落ち着いてから調べてみたけれど、やはりここには外との連絡手段が一切ない。私のスマホも、家の固定電話も無い。まあ、あったとしてもこんなところではきっと圏外だ。
それに、私が暇な思いをしないようになのか、映画のDVDが沢山置かれていた。テレビは未だに砂嵐が流れているけれど、DVDレコーダーは普通に使うことができそうだ。確かに1日何もしないだけというのも退屈なものだ。惰眠を貪ることしかできなくなってしまう。
そうして私は、深く考えることをやめていった。
救出者No.74 北見奈々 3日目
適応2日目、部屋の使い方をだんだんと理解してきたようだ。同時に、両親の部屋を封鎖、
…そうして、もう何度目の日が昇っただろうか。もう、数えるのはやめた。
だって、この幸せな日々は終わらないんだ。
今日はどの映画を見ようか、海のドキュメンタリー映画は新しい発見があって楽しかった。もし他人の作ったものを鑑賞することに飽きたなら、自分で物語を書いてみるのもいいかもしれない。時間はたっぷりあるのだ、なんなら長編でも書いてみようか。とりあえず世界を描いてみよう、もう想像で頭が爆発しそうだ。今までは自分で物語を書こうとなんて考えたことは一度も無かったのに。
いつからか、あの音は聞こえなくなった。
救出者No.74 23日目
適応22日目。映画鑑賞に飽き、自ら創作を開始した。本日も変わった問題は無し。
見飽きてしまった映画を手放し紙とペンに持ち替えて、また時間は過ぎていく。誰にも評価してもらえないままに私は一心不乱に物語を作り上げていく。うまく表現できないことにもどかしさを感じ、新たな言葉を見つけて歓喜して。
救出者No.74 64日目
適応63日目。本日も創作活動に励んでいる。少々苦悩がみられる。室内に辞書の追加設置を要求する。大きく変わった問題は無し。
毎日、私の想像を描いている。なぜか、何日経ったってその想像は全く揺るがない。部屋にいつの間にか増えていた辞書を頼りに言葉を見つけだし、少しずつ、少しずつ紡いでいく。
もし、これが完成したらどうしようか。もちろん一度は私が読む。でも、その後は?ここでは誰も完成したこれを読んでくれない。読めるのはここにいる私だけ。
いや、そんなことよりもこの物語を作り上げよう。これ以上考えていたら今まで積み上げてきたものが崩れそうだ。
救出者No.74 90日目
適応89日目。創作物の完成が近いようだ。完成後の動向に注意。場合によっては針を要求する可能性有り。
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