死闘7

 強烈な少年の一撃。

 その衝撃は文字通り、強者であった男の身体を貫いた。

 その勢いは止まらず、レオンは後方に下がっていく。

「ぐっ――」

「はぁ、はぁ……」

 大地の呼吸は激しくなる一方だ。少しでも気を抜いたら、そのまま意識が飛んでしまう。

 立つ事すらやっと。大地は霞む目で、レオンの姿を追った。

 少し離れた位置に、奴の姿が見える。

 レオンは無言のまま、立っている。

 あれだけやったのに、まだ立っている。

 ……これでも、駄目なのかよ――。

 これだけやっても、この男には通じないのか。

 そう思ったとほぼ同時。

 ぐらり、と。

 姿勢が、崩れる。

「あ……――」

 もう、自分が何の台詞を発しているのかすら聞き取れなかった。

 その視界には、無機質な地面しか映っていない。

 やっと、あいつに反撃できたのに。これからだって時に、なんで――。

 敵から目を逸らすつもりなんか毛頭無い。なのに、身体が言う事を効かない。

 左手に宿るグールの力が、この時を待ちわびていたかのように、みるみる体表を闇で覆っていく。

「はぁ、ぐ――」

 呼吸が出来ない。苦しい。そして、

「ぐ――ッ……がァ……ッ」

 口から吐き出される呼吸が、呻き声に変わる。

「ガァアアあぁあぁッ!」

ギリギリを保っていた筈の月島大地の意識は、獣のような叫びと共に闇の中に飲み込まれてしまっていた。

 レオン=フローレンスは自身の胸を手で押さえながらも、無言で大地の様子を伺っている。

「……当然の結果だ。小僧」

 一言。そう本人に言い放った。

 先に膝を着いたのは、月島大地自身であった。

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