対決2(工場外)

工場の敷地の外。時雨、牡丹の二人は現場に到着した。

 時雨は普段、生徒会室で紫石を駆使してグールの探索を行い、実働は牡丹と大地に任せている。しかし今回は、ターゲットが探索中に消失するという不可解な現象が起きた為、不審に思い牡丹と一緒に現場に赴いたのだが、

「……」

遠巻きに工場の外観を眺めているだけなのに、不安が煽られる。ここから感じる空気は、どうも嫌な予感しかしない。

「会長」

 牡丹がフェンスの傍に置かれている、大地の鞄を見つけた。

「既に、大地はこの中にいるみたいですが……」

 牡丹はブレザーのポケットから携帯電話を取り出し、大地に電話をかけてみた。しかし、

「……駄目です。電話に出ません」

 呼び出しのコール音が響くだけであり、一向に大地が電話に答える気配は無い。やむなしと携帯電話をしまう。

「グールの動きも気になりますし……」

生徒会室で見た紫石の変動。牡丹も時雨も、確かに一度は反応を示していたのをその目で見ていた。明滅したかと思った矢先、直ぐに紫石の反応は消失してしまった。

「一体何が起こったのでしょうか?」

「……何らかの原因により、グールが勝手に自滅した、か」

 その仮説に牡丹が異議を唱える。

「グールが一人でに消失したということですか? それはあまりにも不自然すぎます」

「若しくは、我々ではない何者かがグールを倒したか」

「一体、どこの誰が? それに、グールが倒せるということは、同時にグールの存在を知っている者ということになります。そんな特殊な事情を知っている者なんて……」

 牡丹の意見は正論だった。事情を知っているものはごく僅かだ。牡丹が知っている限りでは、自分達の他に、区域を担当している生闘会とそれに、元老院のみ。

 まさか元老院が出向くというのも、可能性としては考えられなくも無いが、あまりにも突拍子過ぎており、あからさまに不自然だ。他の区域を担当している生闘会が出張ってきているとしても、その際は必ず、担当区域の生闘会に必ず連絡が入ることになっている。今のところ時雨のもとには、そんな連絡はきていない。

 ――では、一体誰が……?

 時雨は、ある人物の存在を思い出した。元老院ではない、生闘会でもない。実際にこの目で見たことはないが、グールの存在を知っている者。

 牡丹、大地を危険な目に合わせ、サラを苦しめている一人の存在。

 しかし、一体何故……?

 考えれば考える程、分からなくなる。

 その時、工場の方から地を揺らすほどの轟音が発せられる。爆発音が、二人の耳に響いた。

「「!」」

 ここには誰もいないはず、いるとすれば……

嫌な予感が的中したかも知れない。

「会長! 急ぎましょう!」

 牡丹が先導し、フェンスを飛び越える。二人は急いで工場内部へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る