第14話 いいとはいえない環境
その日の帰りから、わたしはマコちゃんのホテルへ赴いた。
マコちゃんが泊っているホテルは確かにビジネスホテルで、ベットに一人掛け用の椅子とテーブル。
旧式のテレビと小さい冷蔵庫。
お風呂はトイレ付きのユニットバス。
そしてかなり古い。
窓を開けたら隣のビルの壁。
マコちゃんが暮らすには似つかわしくない場所だ。
だって、マコちゃんはどう見ても、お嬢様やお姫様といった感じなのだから。
おにぎり一個といい本当にお金が無いんじゃないかと思ったのだけど、お財布の中まで訊くような、礼儀知らずにはならない。
だけどやっぱりうちに誘って正解だったみたい。
部屋の中を見渡すと『マコちゃんの荷物が少ないなぁ』と感じる。
あるのはボストンバック一つと、ピンクの下地にベージュのチェックが入った、フリル付きのワンピースが掛けられているだけ。
ボストンバックの中に部屋着が入っているのかもしれないけれど、きっと外出着は今来ている服とワンピースだけだ。
うちの学校は私服可なので、制服を買う心配がなかったところは良かったと言える。
まるで家出をしてきた少女のよう。
学校へ編入手続きをしているあたり、着の身着のままできたとは考えにくい。
思案を巡らせていると、「アルバイト先をお尋ねしなければなりません」と急くように言うので、諸々を考えるのは後回しにして、一緒に探すことにした。
本当はアルバイトも、うちに来るのだから必要ないとも思った。
でも「それはみなさんも行なっていることですし、わたくしもお世話になるだけの存在にはなりとうございません」と断言されてしまっては、妥協するしかないと、その時は思ってしまった。
アルバイトはその日のうちに、ファミレスで空きが出たとのことで雇って貰えることになった。
わたしはやっぱり『気が進まないなぁ』と思いつつも、マコちゃんのやる気に満ちた態度に、ノーが言えなかったんだ。
そしてわたしは、たまにマコちゃんの住まいに顔を出しながら、二週間が過ぎるのを気長に待ったのだった。
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