第11話 マコちゃん再び【後編】
朝礼が始まり、尾崎先生の定例、「綾瀬、今日も登校しているな。愛してるぞ」と言う一幕を終え授業に入った。
そして休み時間中は、おトイレに行ったり、周りに友達と話をしたり、と目まぐるしく時は流れ、瞬く間に昼休みとなった。
「マコちゃん、お昼持ってきているの?」
「はい。登校前にコンビニエンスストアにて、購入致しました」
「コンビニ? そ、そしたらみんなで食べようよ。一年生の時からクラスの女子は机囲んで食べているんだよ」
「承知しました。そのようにお願い致します」
マコちゃんが発する声に聞き耳を立てていたのか、周りのクラス女子の顔にパッと花が咲き、ここぞとばかりに机を並べだした。
わたしにしたら、一年生の時からもうすでに定例行事なのだけど、みんなはマコちゃんがどうするのかと様子を伺っていたみたい。
実のところ、屋上や食堂のフリースペースなど、昼食を取るのにいい場所が結構ある。
でもせめて沙織と同じ空間で昼食を取りたい、というわたしのワガママで、こういう形になったんだ。
沙織は自分の席で一人、黙々とお弁当を食べている。
マコちゃんが「沙織さんはご一緒に食されないのですか?」と訊いてきたので、「うん、沙織はみんなと囲むと喉を通らなくなるから」と、苦笑い混じりに返答した。
みんなでお弁当を広げると、「今日は豪華ね」とか「美味しそう」など、歓喜にも似た声が木霊している。そしてマコちゃん様子を伺うと、なぜか恥ずかしそうにモジモジと肩を竦め、お弁当を出しづらそうにしていた。
「マコちゃん、お弁当は? 朝買ってきたって言ってたけど」
「えっええ、そうなのですがわたくしが購入して参りましたのは、おっ、おにぎり一個でございますので、少し気恥ずかしいと申しますか」
そう言って頬に桜を散らすマコちゃん。
おにぎり一個?
ダイエットしているのかな?
見る限りでは全く必要ないよね。
それじゃここはお節介覚悟で。
「マコちゃん、良かったらわたしのお弁当一緒に食べない? 食事に制限をしているなら無理にとは言わないけど、今日はお母さんが奮発しちゃって沢山持ってきてるんだ」
「そのようなお心遣いは大変ありがたいのですが、湊様のお弁当をご拝借させて戴くということは、湊様の栄養バランスにもご影響されるのではないかと」
戸惑いを隠せない素ぶりでそう応えた。
遠慮がちなマコちゃんにどうしたら食べて貰えるかと首を捻る。
すると周りのみんなが「そうしたらみんなで一緒に食べましょうよ」と、どこから持ってきたのか、取り皿に分けだした。
みんな優しい!
美味しいね〜と感想を述べながら、それぞれが持ち合わせたお弁当をみんなで頬張った。
こう見ると風貌こそ違うけど、マコちゃんも普通の女子高生なのよねと再認しちゃう。
ここに沙織が入ってくれれば、言うことないのだけれど。
でも、マコちゃんがこの輪の中に入れたように、環境は変えることができるのだし、沙織改造計画が成功した暁にはね。
みんなと雑談を交え昼食を終えると、わたしはみんなに視線を投げてお願いをした。
「みんなの気持ちありがとね。すごく嬉しかったよ。
輪をかけて甘えるのも申し訳ないんだけど、マコちゃんとは小さい頃の友人で昨日再会したばかりなの。
だから、残りのお昼休みの時間はマコちゃんと二人でお話ししたいんだ」
わたしは苦笑いをしながら、申し訳なさげにみんなの動向を伺った。
実際、本当に申し訳なく思っている。
そうしたらみんなは。
「そっか、積もる話ありそうだね」
「まだ一年始まったばかりだし、わたしたちは後でもいいから気にしないで」
「美人二人を残していくのは心配だけど、何かあったら叫ぶのよ」
なんて、気を使った言葉を残して机を元に戻した後、教室から退出して行った。
マコちゃんへは「明日からもお昼一緒に食べようね」って声を掛けて。
マコちゃんは「嬉しゅうございます。是非お願い申し上げます」と、屈託のない笑顔で応えていた。
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