第5話 再会の兆し
そんな話をしていたら、朝礼の時間になった。
教室の前のドアから担任の先生が入ってくる。
担任の先生は一年生の時と同じ、若くて綺麗な女の先生。
年齢は二十四歳。
名前は『尾崎 玲奈』さん。
黙っていたら、モデルのお姉ちゃんに匹敵するんじゃないかというくらい綺麗な人。
だけど、中身が男そのもの。
たぶん曇りガラスで声を変えたら、みんな男の人だと思うはず。
スタイルも引き締まったスラッと体型で、勿体ないなっていつも思う。
致命的なのが、男の先生や男子生徒に「俺は同性愛者だから、誘いや告白はお断りだ」と断言していること。
教育者としてどうなの? って気がするけど、その堂々とした態度が素敵だということで、ファンも多いんだ。
その尾崎先生が教壇に上がると。
「みんな、おはよう。みんなとはまた同じクラスだから自己紹介はいらんな。
一年間よろしく頼む。
去年と同じことを言うが、お前らに壁は付き物なんだ。
考え悩んで乗り越えることが出来なくて、どうしても手に負えない時は俺に言え。
誰よりも力になると約束するからな」
凛としてそう話す尾崎先生。
このクラスのみんなは一年生の時、先生が信頼のおける人でとても頼りになるのはわかっているから、示された言葉に誰も疑念の余地はない。
っていうか、よく見れば本当に一年生の時と同じクラスメイトだ。
なぜ? 不思議。
でもその答えは、まもなく尾崎先生の口から、余計な言葉も混ざり発せられた。
「絢瀬、いるな。俺は教頭に無理言って、絢瀬率いるクラス全員を、次の年も引き継ぎたいと嘆願したんだからな。
教頭もクラス全員の成績が伸びていたのだから、無下にはできなかったようだ。
そもそも俺は、絢瀬と違うクラスなど絶対に耐えられない。
さすがに絢瀬とだけ同じクラスにしてくれと教頭には言えなかったから、希望が叶って良かったよ」
そうなんだよ〜。
なんか先生、わたしに固執してくるんだよね。
だからわたしにしたら、二年目が始まったかって感じ。
前に「俺は絢瀬のことを愛しているんだが、生徒間の恋愛は自由だから気にせずやってくれ。俺も大人だから縛ったりはしないぞ」と問題発言を口外していた時は、本当に先生なのかって疑ったけど。
まあそれで沙織と同じクラスになれたのだから、結果オーライなのかもしれないけどさ。
でも、だからクラスメイトが一緒だったんだ。
そういうカラクリがあったのか。
「先生、ここは学校なんですから公私混同はやめてください。
あんまりそんなことばっかり言っていると、わたしは嫌いになりますよ」
「すまん、調子に乗った。あんまり嬉しかったもんだからついな。頼むから嫌いにならないでくれ」
そう言いながら顔の前で合掌するように、両手を合わせる尾崎先生。
困ったように眉間に皺を寄せている。クラスのみんなは苦笑い。
そして……
「今日、更に俺にとってテンションが上がることがあるのでな。帰国子女ではあるが、俺好みの編入生だ」
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